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社説「島伝い」

2015年6月1日

外交からの学び

今年は第2次世界大戦が終了して70周年という節目の年であることから、当時のことやその後の歴史について取り上げられる機会が例年以上に多くなっています。日本では安倍総理が夏に公表する予定の70年談話の内容を巡って様々な議論がありますが、その中で特に話題になっているのが中国および韓国との関係。日本にとって地理的にも歴史的にも関係の深い国々ですが、ここ数年は残念ながらあまり良好な外交関係とは言えない状況が続いています。ただし、4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ会議の際に日中首脳会談が行われるなど関係改善の兆しも見られ、国際的な関心が寄せられています。

 

かつて開発途上国と呼ばれていた国々が大きな経済成長を遂げ、今や従来の先進国をしのぐ勢いで発展している例がいくつもあります。世界情勢が大きく変わり、さまざまな要素が複雑に絡み合い渦巻く中、日本がこれからも前に進んでいくためには、国としての方針をしっかり持って貫くことが今まで以上に求められます。周りへの配慮は欠かせませんが、周囲の顔色を伺い、相手の機嫌を損ねないためにと方針を簡単に変えたり曲げたりしていては、かえって信用を失いかねません。

 

同じことは我々のビジネスにおいても言えます。言うべきことをきちんと言わず、八方美人で誰にでも良い顔をしていては、結局自分の首を絞めることになります。方針をしっかり持ち、一貫性のある行動を取ろうとすれば、時には相手にとって不都合なこともきちんと伝えなければなりません。その上で、双方がそれで良しとできるいわゆる“落としどころ”が見出せれば、たとえどちらの要求も100パーセント満たされていなくても、前に進むことができます。

 

国家間の外交は一般人にはあまり関係のないこと、と捉えがちですが、日本や世界各国の外交について、自分ならどうするかを考えながら見ていると、自分自身の成長や、日々のビジネスにも生きてきます。アジアや世界の情報に接しやすいシンガポールは、そのために最適の環境と言えるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.281(2015年06月01日発行)」に掲載されたものです。

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