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社説「島伝い」

2015年7月6日

「自転車通勤は選択肢に入るか」

以前はシンガポールであまり見かけることのなかった自転車の利用ですが、ここ10年ほどでかなり増えました。外国人が乗っているケースも多いのですが、最近はシンガポール人の間でも自転車を楽しむ人々が増えているようです。

 

自転車愛好家の増加で今後増えるとみられるのが自転車通勤。従来は暑さや雨季のスコールの激しさ、道路事情などから通勤手段の選択肢からは除外していた人がほとんどでしょうが、環境問題や健康への意識の高まりを受けて自転車での通勤を考え、既に実行し始めている人もいるようです。
現状では、通勤者の多いシティエリアには駐輪場がなく、道路にも自転車専用レーンはないため、交通量の多い場所を自転車で走行するのはかなり危険と言わざるを得ません。そんな中で注目されているのがマレー鉄道廃線跡を利用した自転車道。先月、北海道で休暇を過ごしたリー・シェンロン首相も、廃線跡に整備された釧路阿寒自転車道でのサイクリングを楽しんだ後、フェイスブックに廃線跡利用の可能性の一つとして言及しました。
現在マレー鉄道の廃線跡で一般開放されている区間は、ジョギングやウォーキング、サイクリングを楽しむ人々が既に利用していますが、今後本格的な再開発が進んで自転車道が整備されれば、シンガポール北部からシティエリアまで南北24キロを縦断するコースが実現可能。かつては列車が通っていたので起伏も比較的緩やかであり、毎日の通勤・通学での自転車利用増につながると考えられます。

 
しかし、自転車道が整備されたとしても、その前後の行程では一般道も必ず通行することになります。自転車で一般道を安全に走行するための知識やルール、マナーを、自転車に乗る人はもちろん、歩行者や車を運転する側も含めて皆がしっかり認識できるような取り組みが欠かせません。自転車がシンガポールのライフスタイルに浸透すれば、環境への負荷を軽減しながら、より便利で快適な生活が実現できるはず。自転車通勤も当たり前になるかどうかは、今後の取り組みとシンガポールで暮らす全ての人にかかっています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.283(2015年07月06日発行)」に掲載されたものです。

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