2014年8月18日
「メイド・イン・ジャパン」のダークチョコレートを>世界へ届けたい ~Awfully Chocolateの次なる戦略
Awfully Chocolate 創業者&CEO リン・リー氏
- ― 目玉商品、チョコレートケーキの売り上げが伸びて、ビジネスが拡大。2004年に2号店(カトン)をオープンしました。
- 「毎日食べられる」ということにこだわったケーキに使うチョコレートはもちろん自社製です。菓子職人の友人と毎週末、もっとチョコレートの味が欲しい、とか、もうちょっと甘さを控えてとか、ああでもないこうでもないと言いながら、1年間試行錯誤した結果、添加物や人工的な材料を使っていない理想のオーガニック・チョコレートケーキが完成しました。認知度が徐々に高まりつつあったのを機に、アイスクリームも開始。従来からある軽くて適当に甘い市販品に比べ、濃厚なダークチョコレート味が当たりました。シンガポールは1年中季節が夏というのも追い風でしたね。それでも、「Awfully Chocolate」としてのビジネスが軌道に乗るまでは実に6年の道のりでした。
- ― 昨今の経済環境の中で、ビジネス展開するうえでの「壁」は何ですか?
- 小売りビジネスの環境はご存じのとおり、家賃が高止まり、恒常的に人手不足という状況で、F&B業界は瀕死の状態です。ここで成功することはもう不可能に近い。このままビジネス環境が改善しないならば、世界に通じるシンガポール・ブランドは今後30〜40年は出てこないかもしれない。いや、それどころか10〜20年で、既存のブランドも死に絶えてしまうかもしれません。個人的には、今後は海外に出て、現地で人を雇って事業を広げていくしか生き残りの方法はない、と考えています。これまで海外店舗はフランチャイズでしたが、自分達でやればもっとうまくできるだろうと思い、現地会社とジョイント・ベンチャーという形をとることにしました。また、これまでと全く違うビジネスモデルなんですが、量産品も始めました。香港で試験的に始めて好調だったので、シンガポールでもできると思った。現在は、NTUCフェアプライスに商品を卸していますが、スーパーマーケットとショップ製品のクオリティは全く違う。商業レベルで売っていくことを考えると、やはり、もっと味覚や舌触りに関わる食品製造科学のアプローチが必要になってくる。現時点では、これを模索している段階です。
- ― その国際展開計画で、次のターゲットと考えているのは?
- イギリスは、世界有数のチョコレート消費国。まずはここへ量産品を投入して、さらにヨーロッパでも事業を拡げていきたい。欧州主流の甘くて重いチョコレートから一線を画した我々の新しい製品で勝負をしようと考えています。そこでクオリティを考えた時に、製品づくりの場所として候補に挙がるのが、日本。メイド・イン・ジャパンのAwfully Chocolateを全世界へ売っていけたら、と考えています。実はかなり真剣に、日本の創造的で革新的な製造業者を探しています。日本市場への参戦も長年の夢なんですが、既に成熟感があるから慎重にならざるを得ない。もちろん、オファーがあれば非常にうれしいのですが。この計画がうまくいけば世界各国から(シンガポールの)旗を振って、シンガポーリアンによるブランドだとアピールできる。その日は近いと自負しています。
- ― 一念発起で起業を考えている人にアドバイスを。
- マインドセットが非常に大事ですね。事業を始める時、人はいろいろなことを言ってくる。たった一つの商品でどうやってビジネスとしてやっていくの?、オーチャードで店を開かないとだめ、食べるものを売っているのにどうして座るところがないの?、など。非常に貴重な意見ですが、聞き過ぎると焦点がぶれていく。本当に大事なのは、自分で決断して行動するということです。
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リン・リー(Lyn Lee)
1973年、シンガポール生まれ。シンガポール国立大学(NUS)卒。弁護士時代に出会った夫との間に3児をもうけた。ビジネスを手掛ける傍ら母親業もこなす秘訣は、世間がいうライフスタイルやバランスの基準にとらわれないこと。自分のスタイルを確立することが大事、といい、時間を見つけてはスイミング、映画観賞、旅行を楽しむ。「日本人のDNAは世界のどこのものとも違う」という自論を持つ大の日本好きで、「食やサービスがファンタスティック」(リン)な日本へ年に一度は訪れる。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.263(2014年08月18日発行)」に掲載されたものです。
取材=野本寿子 写真=桑島千春