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2009年8月3日

シンガポールの服の常識を変えていく、ユニクロ・シンガポールの挑戦

ユニクロ・シンガポール・マネージング・ダイレクター アルバート・チュウ氏

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日本人の我々にはすっかりお馴染みの「ユニクロ」が、今年4月にシンガポールに上陸してから約4ヵ月。タンピネスにある1号店に続いて、今最も注目を集めるショッピングセンターのアイオン・オーチャード内に2号店が、今月7日、オープンする。ユニクロの海外進出は、2001年のイギリス・ ロンドン出店からはじまり、中国、米国、香港、韓国、フランスと世界各国の市場へ続々と乗り込んできた。不況下においてもその勢いは留まることはなく、満を持してユニクロの東南アジア初進出を果たしたのである。

 

今後「ユニクロ」がシンガポールのマーケットにおいて、どのように受け入れられていくのか、ユニクロ・シンガポールで、マネージングダイレクターの一人として新たな市場開拓の指揮を取るアルバート・チュウ氏に、シンガポールにおけるユニクロ戦略を聞いた。

 

ユニクロブランドをシンガポールで確立するために

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シンガポールが東南アジアの最初の出店となることを、「世界市場に積極的に展開しているユニクロにとって、シンガポールに出店することは、東南アジアという大きなマーケットを見据えた戦略的な第一歩ともいえるでしょう。」とチュウ氏は語る。もともとアジアの生産拠点の一つとして、香港資本のウィンタイグループとファーストリテイリングの提携関係が以前からあったことから、シンガポールで数々のアパレルブランドを運営するウィンタイ・リテイルと合弁会社設立が実現した。

 

新興住宅地のタンピネスに1号店を開店して以来、マーケットの反応は上々であり、チュウ氏自身も驚くほど、ブランドとしてのユニクロが受け入れられてきている。「景気が低迷する中、消費者はより商品価値の高いものを求める。ユニクロのカジュアル衣料にとっては、むしろ好機だったのでしょう。幸いにして売り上げも順調な滑り出しです。」

 

「もちろん、目下の売り上げ目標の達成も大事ですが、日本の市場がそうであるように、ユニクロがシンガポールで暮らす人々のライフスタイルにとって欠かせない存在になるくらいまで、そのプレゼンスを引き上げていくことが大事だと思っています。」と、シンガポールのカジュアル衣料に対する既存の考え方も変えていきたい意向だ。リーズナブルな価格でありながら上質、そして色やデザイン、サイズも豊富に揃えて提供するユニクロならそれは可能だ、とチュウ氏は期待している。

 

シンガポールでは何かと縁遠い秋・冬物衣料に関しても、日本で新しいラインが発売されれば、積極的に紹介するコーナーを作り、ラインアップを充実させ、ユニクロの衣料を試してもらう機会を増やしたい考えだ。その流れの中で、日本でもベストセラーとなったドライメッシュ、ヒートテックといった、服に性能を持たせたユニクロ独自の画期的な技術もいずれマーケットの知るところとなっていくだろう。

 

シンガポールでのブランド力、企業力を高めて拡大へ

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ユニクロ・シンガポールは、3年後に島内で8店舗の確保を目指し、マレーシアでの出店も果たす予定で、今後テナントとして入居するショッピングセンターなどを模索中だ。デベロッパーであるビルのマネジメントも、ユニクロの出店は、その話題性と集客力を目の当たりにしていることから、意欲的に検討しているという。そのプランを実現させるためにも、ブランドの浸透の上に、強い組織力も求められている。

 

「日本からの強いサポートを得られていることがありがたい。現場に日本のユニクロのスタッフも入り、ユニクロ流ともいえる系統だった日々のオペレーション業務の導入から、商品知識の浸透まで、親身に取り組んでくれている。ローカルスタッフも、商品知識をどんどん吸収しながら、それをお客様に伝えられる喜びを感じていますし、常に店内を清潔に保ち、お客様を丁寧にお迎えする日本のカスタマーサービスのスタンダードを学ぶことに相当意欲を持ってくれています。」と、組織として体力がついてきたことにも手応えを感じている。「ユニクロ・シンガポールは、日本とシンガポールからの少数精鋭の混合スタッフでマネジメントしています。新しいチームですから、徹底的にコミュニケーションをとり、何事にも皆の合意を得ながら進めるように心がけています。」と語った。大事なことはお互いに敬意を払い、理解しようとする積極的な姿勢だと思います、とも付け加えた。

 

「前職で日本企業と協働する機会がありました。日本側は、常に高い目標を掲げて、それを達成するために社員が一丸となって取り組むエネルギーに溢れていた。それが日本企業の力だ、と私は驚きながらも、自分が一度その中に入ってその士気の中に溶け込むと、チームの一人として頑張る気持ちになった経験があります。」と当時を振り返り、ユニクロ・シンガポールでも、高い目標を掲げつつ、できる限りの挑戦をしていくつもりだと語った。

 

常に時代の変化やニーズに柔軟に対応しながら、シンガポールでなくてはならないブランドに成長させるというゴールに向かって邁進するチュウ氏の熱意は、コミュニケーションを重んじるマネジメントによって、オフィスや店舗のスタッフにも確実に伝わっていくだろう。

 

「服はライフスタイルの部品である」というユニクロのコンポーネントウェアの発想が、シンガポールの多くの人のライフスタイルに浸透していくことで、街行く人々がどのようにカラフルに着こなしていくのか、今後が楽しみである。

 

若きマネージングダイレクターの横顔

さっぱりとしたコットンシャツにジーンズをスマートに着こなす長身のチュウ氏。今ではユニクロの服の着心地の良さの虜になり、ユニクロファンを自称していると柔らかく笑う。もともと公認会計士として、経理や財務でのキャリアが長いチュウ氏だが、オペレーションを任されてきた経験もあり、人と接しながら仕事をすることの方を好む事から、今のポジションにつけてラッキーだと言う。今後もシンガポール的なビジネスストラクチャーに日本的なマネジメントの良い部分をバランスよく取り込みながら、ユニクロ・シンガポールを盛り上げていくつもりだ。

 

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週末を利用しながら、チュウ氏は店舗にもよく足を運ぶ。最近では、日本人の母子が買い物に来る姿もよく見かけるそうだ。実際に顧客から、ユニクロの商品は質がいいのに求めやすい価格が嬉しい、また来ます、などの一言を聞く事に喜びを感じるという。顧客満足を勝ち取る事でリピーターを生み、リテールビジネスが拡大しえるという信念があるからだ。

 

現在、日々の業務のほか、リテールマネジメントのMBAの修士論文の締め切りを目前に控えた学生という二足のわらじを履いている。そんな努力家のチュウ氏の信条は、何事を克服するにも努力あるのみ、一歩一歩前進すれば必ず達成できるというもの。また、数字にも強い氏らしく、時には冷静になって、ロジカルに物事を進めることも大事、と付け足した。

UNIQLO (SINGAPORE) PTE. LTD.
3 Killiney Road #10-01 Winsland House 1, 239519
E-mail:enquiry@uniqlo.com.sg

3 Killiney Road Winsland House 1, Singapore 239519

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.150(2009年08月03日発行)」に掲載されたものです。
取材=桑島千春

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