シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP「水」に関する政策・知識・技術・人材

来星記念インタビュー

2010年6月21日

「水」に関する政策・知識・技術・人材

〈シンガポール国際水週間2010〉

今年で3回目を迎えるシンガポール国際水週間(SIWW:Singapore International Water Week)。期間中は世界各国・地域のリーダーや、研究者、水関連企業トップなどが集まる会議のほか、水関連技術の展示、日本、アメリカ、オーストラリア、インド、中国など世界各国の水への取り組みやビジネスチャンスなどについて話し合われるビジネスフォーラム、さらに同時開催プログラムなども多数あり、「水」に携わるあらゆる人にとってグローバルな情報交換や商談の場として年々規模を拡大しつつある。

 

今年のSIWWの見どころや日本関連のイベント、フォーラムなどについて、在シンガポール日本国大使館一等書記官で日本およびシンガポールの水政策にも詳しい清瀬氏が解説。

今年のシンガポール国際水週間の見どころ

在シンガポール日本国大使館 清瀬一浩

p1-2今年もまた、SIWWの季節がやってきた。今回で3回目となるSIWWだが、一昨年、昨年と回を重ねる毎に着実に世界的な認知度を増してきている。「グローバル・ハイドロ・ハブ」を目指すというシンガポール政府の目論見は成功しつつあるようだ。

 

さて今年は、日本勢の活動が目覚ましい。Water Expo内の「日本パビリオン」は過去最大であり、シンガポール以外の国別パビリオンとしても最大である。我が国国内でも、水ビジネスを始めとするインフラ輸出への官民の関心が高まっていることの証左であろう。とりわけ、東京都、横浜市、大阪市の公営水道3局の出展には耳目の集まるところ。我が国の水道事業は民営化の経験がないためノウハウは公営水道が保有しており、その海外進出が日本の水ビジネスの活路を拓く方策の一つ、という議論を地で行くものだ。また、6月30日(水)に開催される「日本ビジネスフォーラム」は昨年に比べ大幅に充実している。この1年間、新政権下での「新成長戦略」の策定や、経済産業省の水ビジネス国際展開研究会で水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方策についての報告書が取りまとめられるなど、我が国の成長戦略に関する政策の関連で大きな動きがあった。これらが反映されたフォーラムとなるだろう。我が国の成長戦略が、市場となる国・地域においてWin-Winのものと捉えられ、相互の発展につながるものと映るかどうか、期待したい。

 

SIWWの発展に従い、関連行事も充実を見せている。SIWWの開会に先立つ28日(月)午後には「アジア太平洋水大臣会合」が開催され、地域の水問題について討議される予定だ。30日(水)午前には、日本が主導している「サニテーション・ナレッジハブ・セミナー」が汚水処理の問題をテーマに開催される。

 

大使館としては、日本勢の活動を全面的に支援致したい。その一つとして、30日、「日本ビジネスフォーラム」に引き続き、ネットワーキング・レセプションを開催する予定である。内外、官民問わず、水ビジネス・水資源政策関係者が広く情報交換をし、将来のビジネス機会につなげて頂ける会としたい。SIWWへ参加登録をしていればどなたでも参加可能であるので、是非御活用頂きたい。

 

SIWWでの日本勢の活発さは、日本国内に向けて、官民ともシンガポールに着目し、当地を海外向け水ビジネスの情報発信拠点・営業拠点として活用すべきと訴えてきた小職にとっては、感慨も大きい。しかし、シンガポールはその間にも着実に前進している。今年のSIWWは、第2回世界都市サミット(WCS、テーマ:Liveable & Sustainable Cities for the Future)と同時開催である。一昨年、WCSは”Liveable and Vibrant Cities”をテーマにSIWWと同時に第1回を開催したが、その企図はやや不明確であった。しかし、この2年の間に、「持続可能な都市開発」はシンガポールの開発の成功を語るキーフレーズとして定着し、自国をモデルとした都市インフラ・パッケージの新興国への輸出が経済成長戦略として確立されてきた。今年のWCSでは、第1回となる「リー・クアンユー 都市賞」が創設されたが、都市開発分野のおけるシンガポールの認知度を向上させるという意図が見える。また、シンガポール政府は「都市の生物多様性に関するシンガポール・インデックス」という指標を生物多様性条約(CBD)事務局と共同で開発しており、本年10月に名古屋で開催されるCBD第10回締約国会議(COP-10)において承認される予定だが、これも、今後の都市開発においては環境との調和、環境負荷の最小化が標準的に求められることを睨んでの下地の整備であろう。

 

シンガポールの戦略は、都市内に収容されるあらゆるインフラや環境を統合的に計画・開発・運営することへと移行しており、水ビジネスもその中の一つのメニューとして包摂されつつある。この分野でのシンガポールの変化と進展の内容を見ることは、今年の醍醐味の一つであり、日本の将来を考えるに当たっても実に示唆的なものとなるのではないだろうか。

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.169(2010年06月21日発行)」に掲載されたものです。
文=石橋雪江

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