2021年4月5日
「お客様目線」でワンストップ対応 フェニックス アカウンティング シンガポール
国際ビジネスのハブとして重要な役割を担っているシンガポール。外務省「海外在留邦人数調査統計(令和元年10月1日現在)」によると、平成27年から令和元年まで在留邦人数11位をキープしており、シンガポールを含めた11カ国では長期滞在者の約8割を占めているほどです。シンガポールをアジアの拠点として、進出した日本企業も多数存在しています。新型コロナウイルスの影響で新たに進出することは難しい状況ではありますが、「進出する」という計画自体はなくならないでしょう。
シンガポール進出を目指す企業にとって頼りになるのが、会社の決算や税務申告、会社設立代行手続きやビザ申請、シンガポールの法律に基づいた会社運営などをサポートしてくれるPhoenix Accounting Singapore Pte Ltd(フェニックス アカウンティング シンガポール)です。大手会計事務所とは異なる品質の高いサービスで、ライバルというよりは補完し合う関係を確立し、多くの日系企業をサポートしています。大手会計事務所と「どこが違うのか?」「どのようなサービスを提供していて、何が強みなのか?」など、Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdの伊藤哲男さんに伺いました。
目次
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdの成り立ち
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltd設立の流れなど、沿革をお教えください。
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdは、フェニックスアカウンティンググループのグループ会社の一つです。フェニックスアカウンティンググループという会計事務所グループは、私が日本で2006年に創業したことから始まりました。シンガポールでの運営は2012年に進出してからですね。私とパートナーの齋藤貴加年、彼と二人でグループを創り始めたのですが、齋藤が2011年にインドネシアのジャカルタに進出。今は、シンガポールとジャカルタの他に、クアラルンプールやタイのバンコクに展開してASEAの拠点を増やしてきています。
どのようなサービスを提供しているのですか。
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdは、いわゆる会計事務所ですので、会計・税務のアドバイスを提供させていただくのが一般的な仕事になります。お客様のほとんどは日系企業ですね。また、シンガポール進出のサポートをしておりますので、会計帳簿の作成や親会社への財務報告、税金申告の代行などの一般的な会計事務所の仕事だけでなく、ビザの申請や会社の設立など、会社の管理面を必要に応じて丸ごと受けている感じです。
日系企業の場合、駐在員の方が会社運営や経理周りに詳しくない事業部門の方である場合が多いです。ですので、事業に集中していただいくためにも、事業以外のことは全部サポートできるような体制を意識しています。
企業のオーナー様や個人のお客様には、シンガポールにおける日本の相続税の対策や資産運用のスキームなど、海外ですと保険も日本と違う部分もあるので、そこを含めてアドバイスすることもあります。
伊藤さんはシンガポール勅許会計士の資格をお持ちですが、これはどのようなことができる資格なのですか。
シンガポール勅許会計士は、シンガポールにおける日本での公認会計士のような会計士の資格になります。例えば、弁護士だと法務のアドバイスはその国の資格、その国の法律でしかできないのですが、会計士という仕事に関しても同じようなもので、企業の決算書をチェックする会計監査という仕事は、その国の資格を持っていないとできないというのが一般的です。ただし、私はシンガポール勅許会計士の資格は持っているのですが、弊社は監査には対応していません。監査するには、独立性が必要になっているので、他のサービスを提供しながら監査を同時にはできないのです。会社の決算をチェックするのに、他のサービスで報酬が発生していたら、その会社に便宜を払う可能性があります。ですので、「この業務(監査)しかやっていませんよ」というの体制が必要になります。
私たちは、幅広いサービスを提供している立場上、監査はやらないことにしているのです。なので、資格は持っているのですが、その資格がないとできない業務はやっていないというのが実態です。また、資格にはもう一点の視点があって、資格を維持するために、現地の研修会に出て新しい制度などの知識のアップデートをしないといけない義務があります。さぼると資格がなくなってしまうので、情報が更新されているという証でもあります。
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdの強み
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltdの強みを教えてください。
シンガポールには私たち以外の大手会計事務所も存在しています。私は会計士になって20年以上になるのですが、会計基準や取引が複雑化しているため、大手は昔と比べて監査業務やコンサル業務などがセグメント化されてきています。IPO支援や金融機関の業務など、昔は同じ部門でいろんなことをやっていたのが、今は会社内の「組織」で区切られ、さらに「業界」で区切られます。さまざまな知識が高度化しているので、どうしてもそうなる部分もあるのですが、中にいる人間としては、特定の仕事の特定の業種しかやらなくなってしまうのは寂しいですよね。そして、私たちの会社は、さまざまな業種のお客様に対応しているので、幅広い視点と業種を担当した経験、その知識と経験が大事になります。当然、得意分野はありますが、個人個人が色々な業務に対応して、視野を広げることを重視しています。そして、その広げた視野を経営のアドバイスに生かすことがステップアップになります。今のセグメント化した形ではない、いい意味での昔の会計事務所のような環境をキープしようとしています。
一方、専門家サービスとして、テクニカルにアドバイスをして終わってしまうのではなく、「お客様サイドに立つ」ことも大切です。メリット・デメリット、リスクなどを説明した上で、「御社はこういう状況なので、こういう風にするのはどうですか」と、お客様と一緒に問題解決をしていく姿勢が重要なのです。
大手の場合、そこは責任が取れないこともあるので「してはいけない」となるところがあるんです。意思決定に立ち入るというと言い過ぎなのですが、お客様目線で問題解決の支援をするところが強みなのかなと思います。
また、大手会計事務所に監査や税務をお願いしている企業様でも、私たちが対応の支援やアドバイスしていることもあります。競合というよりは補完し合う関係を築けていると思います。
さまざまな業種に対応しているのですね。
製造業・食品・不動産・IT企業・エンターテインメント業界のお客様など、本当に幅広いですよ。共通する取引があれば、業界別に起きている問題が似ているという部分にも気付くことができます。色々な業種をさまざまな知識で対応していると、新しい取引で「それはここであったよね」という話も出てきます。
企業のシンガポール進出のメリットはどこにありますか。
現在は新型コロナウイルスで進出は難しいのですが、シンガポールの生命線は東南アジアにおけるビジネスのハブであるという部分です。発展したハブには、ビジネスの情報も集まってきますので、シンガポールに身(会社)を置くことは重要だと思います。また、その重要性をシンガポール政府も分かっているので、最近は厳しい政策(ビザ申請の改訂・ローカル雇用の促進など)を打ち出したことが話題になっていますが、そうは言っても、情報が集まる、お金が集まるような仕組みを追求する政府の方向性は変わらないでしょう。逆に考えると、コストが高くなってもソフトの部分ではハブになり続けようと考える政府によるサポートがあるのは、シンガポールの大きな強みですね。税率も低いメリットもありますが、それに加え、法律が分かりやすくてビジネスが進みやすいというのも、税務だけでなく、総合的に効率的だと思います。
逆にデメリットはありますか。
進出されるお客様はASEANでの事業展開を見据えて出てきていらっしゃいますので、デメリットを上回るメリットがあると思います。新型コロナの影響はどこでも同じです。どちらかといえばシンガポールは抑え込んでいる方なので、そのうちプラスになっていくだろうとも思います。強いていえば、人件費や家賃が高いという「コスト高」は当然あります。ですが、シンガポールのコスト高が一概にデメリットというのは…マーケットによる違いもあるので。お客様ごとの問題になると思います。コスト高で苦しんでいるお客様もいれば、それ以上に利益をあげているお客様もいるというのが実際のところです。シンガポールに会社を作ること自体は、形態によってはそこまでコストはかからないので、まずは実際にシンガポールに身を置いて、マーケットを学んでいただくことが良いのかなと思います。
日本とシンガポールの橋渡しとしての苦労
日本企業のシンガポール進出のサポートで特に気をつけていることはありますか。
強みでもお話しましたが、「お客様の立場」でサポートすることに重点を置いています。進出には、色々なチャレンジがあると思います。日本のサービスはきめ細やかですが、シンガポールでは、それが当たり前ではありません。海外に慣れていないと、そのサービスの低さにストレスを感じてしまうかもしれません。私たちの会社には、日本人スタッフだけではなくローカルスタッフもいます。日系の企業様ですと、やはり「日本のサービス」を求められてしまうので、ローカルスタッフへの指示は明確に行うようにしています。シンガポールには日本人が多く、日本飲食店も多いので、日本と同じように感じてしまいがちです。ですが、やはりローカルとは違いがあるので、そこに合わせないといけない部分が出てくることもご理解いただきたいです。
シンガポールと日本の違いが現れる部分はどこですか。
シンガポールでは、細かいルールがないんですね。例えば、接待交際費。日本だと細かいルール(一人5,000円以内。誰との交際に使ったのかを明記するなど)が決まっていて、それをクリアすればOKとなりますが、こちらにはルールはありません。ビジネス上100%事業に関係があるのならば、いくらでもいいとなるんです。これを、日本のお客様が「シンガポールの交際はいくらでも入れられる!」と勘違いしてしまうこともあります。ルールベースだと、「ここまでやれば(必要書類などを提出すれば)大丈夫ですよね」と言質を取ろうとしますが、そこは「税務調査官にまじめな顔で説明できる内容なのかを考えてください」とお返しします。ルールベースではないということを理解する必要があると思います。
これまで携わられたお仕事で、特に印象に残っているエピソードはありますか。
シンガポールの会社とASEANにある会社をM&Aで買収した日本企業様から、「子会社がどうなっているか分からないので調査してください」と依頼されたことがあります。自分たちで作って駐在員を派遣した会社ではなく、買収した会社であったため、放っておかれて、うまく現地の情報が日本の親会社に吸い上げられていませんでした。日本の経理の方は、買った直後にちゃんと指示をしておけば、阿吽の呼吸で「こういう報告書があがってくるだろう」と思っていたのかもしれません。それとも、日本のやり方を押し付けようとして、そっぽを向かれたのかもしれません。こういったすれ違いもあるので、私たちのような存在に早めにご相談いただいて、報告体制をしっかり作っておかないと、難しい状況になってしまうかもしれません。
また、日本とシンガポールの共同プロジェクトで、コミュニケーションの間に入って大変なことがありました。日本のチームの会議では、あらゆる状況を想定した議論になりますが、シンガポールのチームは大まかに「これが正しくてこう向かうべきだ」と決めて、その方針で進めます。日本人の「これが起きたらどうなる?」→「だからここはこうしちゃいけない」という『先に問題点を潰しておきたい』という思考が通じません。その違いから、ミーティングが終わった後にシンガポールチームから「会議でなにを議論していたんだ」と問われることもありました。
シンガポール側は「できる・できない」で考え、できると判断するとどんどん進んでいく。日本人チームは同じ状況でも「できる」と言わないんです。作業の最後までを考えると現時点では「できる」と確信できないためです。トラブルの先回りをするために「できるかできない」をぼやけたまま何とかやろうとする日本チームに対して、シンガポールチームからは「できるかできないかを聞いてほしい」との要望も来ます。ただ、「できる」という意識を優先して進むシンガポールチームのやり方だと、やはり壁にぶち当たる。日本人チームからすると「だからできないんだよ」となるんですが、シンガポールチームは方向を少し変えて乗り越えちゃうんですね。それも悪くはないんです。壁に当たったところで考える。どちらが良いか悪いかではなく、両方の良さを丁寧に伝えないといけないので、間に入る方は大変です。
これからの海外進出とメッセージ
新型コロナウイルスの影響とこれからの展望をどのように見ていますか。
企業様によっては、やり方を変えている動きはありますが、企業の進出の意向は「止めてしまおう」ということにはならないと思っています。一方で、駐在員を減らそうという動き、人は減る可能性はあると思います。実際、シンガポールにいなくても出来る仕事はありますし、ビザの申請も厳しくなっていますので。現地にて活動している私たちの重要性が増してくるのかなとも思います。
これからの目標を教えてください。
これまで何度か申し上げましたが、私たちには大手会計事務所とは違った意味での品質の高いサービスが求められています。お客様の立場に立ち、細切れの専門家ではなく、ワンストップで対応する。それをできる広い視野を持った会計士を配置して、日系の事務所としてはワールドワイドネットワークでナンバーワンを目指しています。
最後に読者へのメッセージを。
私たちの海外での仕事は、日系企業のレポートがメインです。日本企業の中で、商社などの国際的な企業は海外での活躍が目覚ましいですが、そうでない新規の進出などももっと増えてほしいと思っています。もちろん、日本を重視して日本経済が活性化することも大切ですが、海外にも広げていって、日本の全体的な国際化をサポートしていきたいと思っています。ですので、まだ海外に進出していない企業様にこそ気軽にご相談いただきたいです。企業でなくても個人で起業されている方もいらっしゃいます。また同業の会計士についても、どんどん日本から出て、また日本に戻って国際取引のアドバイスをする循環が必要だと思います。海外に出ていない会計士にとっても、シンガポールを第一歩目とするのは良いのではないでしょうか。
現在は新型コロナウイルスの影響でシンガポール(ASEAN)への進出の計画を一時ストップしている企業や個人も、準備を進めておけば、状況が変わっていざ進出となった際、スムーズに事が運ぶでしょう。大手会計事務所とは違う「お客様目線」で対応してくれるPhoenix Accounting Singapore Pte Ltd。大手会計事務所と補完し合う存在でもあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
伊藤 哲男(いとう てつお)
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltd
Group Managing Director
大手監査法人のKPMGに入社し上場会社等の監査業務を行う。2004年に退職し、同KPMGのニューヨーク事務所に現地採用で転職。
帰国後、フェニックス・アカウンティング・グループを創業。2012年に来星してシンガポール法人を立ち上げ、日本企業のシンガポール進出の他、シンガポール上場支援、国際税務、クロスボーダーM&A関連業務などを行い日本企業を総合的に支援している。
Phoenix Accounting Singapore Pte Ltd
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