シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP【2020年8月最新】シンガポールの家賃免除制度

会計・税務相談

2020年8月18日

Q.【2020年8月最新】シンガポールの家賃免除制度

Q.家賃免除制度とは、どのような制度ですか。

 家賃免除制度は、5月26日の第三次予算案において発表された政策によるもので、要件を満たす中小企業のテナント事業者に対し、最大4ヵ月分の家賃を免除する制度です。
 

 免除の種類   適格商業用不動産   その他の非居住不動産 
 政府負担による家賃免除  2ヵ月分
(2020年4月および5月分)
1ヵ月分
(2020年4月分)
 家主負担による追加家賃免除  2ヵ月分
(2020年6月および7月分)
1ヵ月分
(2020年5月分)

 
 このうち、政府負担による家賃免除は、3月26日の第一次補正予算案にて発表された2020年度不動産税の減免がその原資の一部に充てられ、不足額は現金にて家主に交付されます。非居住不動産の不動産税は、不動産の年間賃料にほぼ相当する年次価額の10%とされており、減免は一般の商業用不動産が100%、マリーナベイサンズおよびリゾートワールドセントーサが60%、その他の非居住不動産が30%となっています。家主は、減免された不動産税について、全額テナント事業者に還元することが義務づけられており、上記の家賃免除制度の適用を受けられない場合でも、家主が減免された不動産税に相当する金額はテナント事業者の家賃から減額されるはずです。
 
 なお、家賃免除制度によりテナント事業者が免除されるのは賃貸契約に基づく月額家賃ですが、家主に交付される現金は不動産の年次価額に基づいて計算されるため、政府が負担する金額と制度により免除される家賃の金額が一致するとは限りません。また、家賃と併せて徴収される共益費や管理費などは、免除の対象にはなりません。

 

Q.家賃免除制度の適用を受けるには、どのような要件を満たす必要がありますか。

 テナント事業者は、まず以下の2つの要件をすべて満たさなければなりません。
 
 ● 2020年3月25日より前に賃貸契約が文面により締結されていること、または2020年3月25日より前に賃貸契約が文面により締結され、その後の契約満了に伴い自動延長もしくは契約更新の権利の行使が為されていること
 ● 以下の期間の何れかの部分において、上記の契約に基づく賃貸が実行されていること
  適格商業用不動産:2020年4月1日から7月31日
  その他の非居住不動産:2020年4月1日から5月31日
 
 その上で、政府負担の家賃免除については、以下の要件を満たす必要があります。
 ● テナント事業者の2018年またはそれ以後に終了した会計年度(12ヵ月以上)の収益が1億Sドル以下であること
 
 さらに、家主負担による追加家賃免除については、以下の要件を満たす必要があります。
 ● テナント事業者がシンガポールで設立されたグループ会社の一員である場合、営業するグループ会社の2018年またはそれ以後に終了した会計年度(12ヵ月以上)の収益の合計が1億Sドル以下であること
 ● 当該テナント事業者の2020年4月1日から5月31日の平均月間売上高が前年同期(2019年4月1日から5月31日)の平均月間売上高と比較して35%以上低下していること

 

Q.家賃免除制度の適用を受けるために、具体的に何をすればよいでしょうか。

 内国歳入庁(IRAS)は、8月初旬に家賃免除制度の適用対象となる物件の家主に対し、交付する現金の金額を知らせる通知を発行しています。この通知を受け取った家主は、4日以内にテナント事業者に家賃免除について通知しなければなりません。家主から通知を受け取ったテナント事業者は、2018年に終了した会計年度の財務報告書など、適用要件を満たすことを証明する文書を家主に提出します。テナント事業者が対象月の家賃をまだ支払っていなければ、家主がIRASから現金交付の通知を受け取った時点で対象月の家賃の支払義務が消滅します。
 
 さらに、対象月の未払家賃に課せられた延滞料や利子についても免除されます。テナント事業者が既に対象月の家賃を支払済である場合は、今後発生する家賃と相殺されます。家主が2020年2月1日以後に不動産税減免の還元や家賃減額などの措置を講じている場合、これらの減額は家賃免除制度による免除の一部として計算に含められます。

 

Q.適用要件を満たしているはずなのに家主から通知が送られて来なかったら、どうしたらよいでしょうか。

 まず、家主にIRASから現金交付の通知が届いているか確認してください。家賃免除の要件をすべて満たしているにも関わらず、IRASから家主に対する現金交付の通知が2020年8月21日までに届かない場合、2020年8月21日から2020年10月21日までの期間に、家主およびテナント事業者が共同で現金交付をオンラインで申請することになります。
 

Q.家賃免除制度の他に家賃の支払いに関する救済制度はありますか。

 家主負担による追加家賃免除制度の適用要件を満たすテナント事業者は、2020年2月1日から2020年10月19日までの期間の家賃のうち、商業不動産は最大5ヵ月分、その他の非居住不動産は最大4ヵ月分について、2020年11月から最長9ヵ月間にわたり毎月分割で支払う「家賃支払延期制度」を申請することができます。この制度の適用を受けるには、2020年10月19日までに家主にその旨を文書で通知しなければなりません。この制度において未払家賃に課せられる利子は年利3%が上限とされており、最初の支払日は2020年11月1日となります。
 

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Tricor Singapore Pte Ltd 斯波澄子

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