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2020年6月8日

タイ自動車業界:新型コロナで販売が一段と低迷、3月は4割減に

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 前回、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う観光需要の冷え込みで、タイの航空業界に強い逆風が吹いている」と述べたところだが、そのタイでは、観光と並ぶ基幹産業の自動車も業況の悪化が深刻化する状態だ。
 
 ・自動車ローンの与信厳格化、
 ・農業生産の不振による消費の冷え込み、
 ・前年同期の買い替え需要に対する反動

 
 ――などを受けて、昨年夏ごろから落ち込みが表面化し始めていた国内の販売台数は、足元のコロナ禍によって減少ペースが一気に加速。今年3月には、41%超のマイナス成長を強いられている。以下、月次ベースの販売データを確認しつつ、関連のニュースをピックアップしながらタイ自動車業界の「惨状」を改めて検証してみたい。
 

減少し続ける自動車販売台数

 19年6月の自動車販売台数は、前年同月比2.1%減の8万6048台に縮小した。単月として16年12月以来、30カ月ぶりの前年割れ。続く7月は1.1%減の8万1044台、8月は6.9%減の8万838台、9月は14.1%減の7万6195台、10月は11.3%減の7万7121台、11月は16.2%減の7万9299台、12月は21.4%減の8万9285台と一貫して前年割れだ。
 
 20年に入ってからもマイナス成長が続き、1月は8.2%減の7万1688台、2月は17.1%減の6万8271台。そして3月は、前述のように41.7%減の6万105台と記録的な落ち込みを強いられた。
 

 
 今年3月は当然ながら、生産も26%減と大きく落ち込んだ。これを踏まえてタイ工業連盟(FTI)は、生産台数の通期5割減を予想した上で、販売台数や完成車輸出台数も半減する恐れがあるとの見方を示した。
 

自動車生産が年間で半減も

 タイ工業連盟(FTI)の4月23日発表によると、2020年3月の国内自動車生産台数は前年同月比26.2%減の14万6812台だった。減少は11カ月連続。国内販売、輸出とも2桁減だった。新型コロナウイルスの影響による販売減などで、各メーカーは3月末から工場の操業を一時停止しており、4月は落ち込みが加速する見通し。現地報道によると、同連盟は3月の結果を受け、20年通期の生産台数が100万台に半減する可能性があると指摘した。
  
 … (中略) …
 1~3月の生産台数は前年同期比19.2%減の45万3682台。乗用車、1トンピックとも2割前後の落ち込みだった。
 
 FTI自動車部会のスラポン副部会長兼広報担当は、20年通期について、生産台数の他に国内販売台数や完成車輸出台数も半減する可能性があると述べた。新型コロナから早期に回復できたとしても、販売や輸出は3割以上の減少を避けられないとみている。
 (「亜州ビジネスASEAN」4月23日付ニュース)
 

 

相次ぐ休止メーカー

 こうしたなか、最近はトヨタやいすゞなど現地進出メーカーによる操業休止のニュースが相次ぐ状態だ。また米ゼネラル・モーターズ(GM)は、タイからの年内撤退を決定している。
 
  基幹産業である自動車の衰退は、そのままタイ経済の急速な弱体化を意味するだけに、政府としても現状を放置できないはずだ。ロックダウンを緩和・解除していく過程では、大胆なテコ入れが実施されることとなろう。
 
  なお、GMはタイからの撤退に向けて、東部ラヨン県の工場を中国の長城汽車に売却すると発表した。その隙間を埋めるように、今後は中国資本が存在感を強めていく可能性もあろう。

(亜州リサーチ アセアン編集部)

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