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2020年5月19日

《視点ズーミング思考その3》脱常識のススメ!自分の常識は他人の非常識

まず常識を疑ってみる

 2018 年のノーベル生理学・医学賞に輝いた、本庶佑博士のメッセージの中で最も印象的だった言葉、それは「教科書を疑ってかかれ!」でした。教科書に書かれていることは正しいに決まっている、という思い込み的な常識に、待った!をかけた名言です。
 
 発明・発見・イノベーションには欠かせない、常識を疑え!今回は2つの興味深い事例をご紹介します。
 

自社の常識は他社の非常識

 筆者がソニーに勤めていた時代、有名なビールメーカーとコラボしていた時の、今でも忘れられないエピソードの一つです。
 
 15年ほど前、電気メーカーでは、テレビの「ベガエンジン」という風に重要な機能を「○○エンジン」と呼ぶことが当たり前でした。私達はそのノリで、ある重要な機能のニックネームを「☆☆エンジン」としました。すると、ビールメーカーの敏腕マーケターから、「やだやだ、ガソリン臭~い!没!」と叫ばれてしまったのです。私達は皆、目が点になるほど驚きました。ガソリン臭い?なぜか?当時は、電気自動車やハイブリッド車はまだ普及していませんでした。ビールメーカーでは、エンジン=自動車=ガソリンという発想がいわば常識だったのです。口に入る飲料は味覚と嗅覚が商品の命ですから、当然です。
 
 ガソリンからくる“嗅覚”という五感への連想!電気メーカーでは殆ど扱わない嗅覚や味覚は、目からウロコの発想です。“ライフ・サイエンス”の新分野に挑戦中のソニーにとっては、飲料メーカーの常識が、その後の開発に大きな意識変革をもたらすことになりました。
 

常識の壁を壊す

 次の事例は、長野県伊那市の有限会社スワニー、橋爪社長の発明『デジタルモールド技術』です。モノをつくるには、基本的に、材料に樹脂や金属を使い、切削やプレスなど様々な加工が必要です。通常、試作は手造りですが、量産となると「金型」(モールド)が必要になります。
 
 金型は一般的に金属で造りますが、製作に時間とコストが掛かり、製造上のボトルネックになりがちです。橋爪社長は、この常識を打ち破りました。金属製の「金型」ではなく、樹脂を使った「樹脂型」を、3Dプリンターでスピーディーに成し遂げたのです。では、どこが凄いのでしょうか?
 
 プラスチックに代表される『樹脂』という素材は、熱によって溶けたり変形したりします。樹脂の型を使って樹脂製品を作ると、型自体が溶けてしまうため、「樹脂の型は非常識」というのが「常識」でした。しかし、3Dプリンターで使われる樹脂材料には、熱ではなく紫外線で固まる、光硬化性を持ったアクリル系の樹脂があります。この樹脂で「樹脂型」を作成し、ABS などの熱可塑性樹脂を打てば良いのではないか?という斬新な発想から、橋爪社長はチャレンジしたのです。
 
 ご多聞に漏れず、最初の頃は、「えっ?馬鹿な!溶けてくっつくに決まってる!」と冷ややかな目で見られたそうです。ところが、実践したら200ショットを打っても問題無しの実績まであげて、見事に成功を遂げました。少量生産品の量産の型として、2016年の日経製品・サービス最優秀賞も受賞。モノづくりにおける革新的デジタル技術として期待のスター誕生です!
 

よそ者・若者・バカ者

 彼らが連れて来るものこそ、ピンチをチャンスに変える非常識なアイディアです。脱常識の視点で、人生の危機も乗り越えて行きましょう!
 


石川 耀弓 (いしかわ きくよ)
【元ソニーの女性エジソン】の異名を持つ、デジカメの電子シャッターの発明者!
全国発明表彰、特許特級表彰、アントレプレナー賞を受賞。現在は、中小企業のキラリと光る技術を発掘して世界に発信する【フィールウェア・プロジェクト】を主宰。脳の使い方をナビゲートするブレイン・アナリストとしても活躍。ペンネーム下川眞季で『”かわいい”のわざが世界を変える!~フィールウェアという発想~』(彩流社)を上梓。
 
株式会社 ダヴィンチ・ブレインズ 代表取締役社長
(NPO)大田ビジネス創造協議会 理事、技術士(経営工学)
会社URL http://www.davinci-brains.co.jp/
フィールウェア・プロジェクト http://feelware.jp/
著作本書評 http://eliesbook.co.jp/review/ Vol.4932

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