2019年4月23日
Q.商品・サービス税の 還付を受けられない場合
目次
Q :商品・サービス税(GST)を支払ったのに還付を受けられないのは、どのような場合でしょうか。
A :GSTは、シンガポールで供給された商品またはサービス、並びにシンガポールに輸入された商品について、現行は7%の税率で課税されます。GSTは、商品やサービスの最終受益者に税金の負担を求めているため、購入した商品やサービスを使って顧客に商品やサービスを供給する事業者は、GST事業者として内国歳入庁(IRAS)に登録し、かつ顧客からGSTを徴収してIRASに納付することを前提として、インプットタックス(購入した商品やサービスについて支払ったGST)の還付が認められます。従って、まず第一にGST事業者としてIRASに登録していない場合、インプットタックスの還付を請求することはできません。また、GST事業者として登録していても、以下のような場合にはインプットタックスは還付されません。
1. GST事業者として登録する前に発生したインプットタックス
GST登録後 、課税供給を行うために登録前に発生したインプットタックスは、定められた要件を満たしていれば登録後に還付を請求することができますが、それ以外のものは還付されません。
2. 第三者宛に発行されたタックスインボイスの支払い
例えば、関連会社宛の請求書を立替払いした場合など、自社以外の宛先に発行された請求書の支払いを行った場合、インプットタックスを還付してもらうことはできません。
3. 正しく記載されたタックスインボイスを受け取り、保管していない場合
インプットタックスの還付を請求するには、必要事項が正しく記載されたタックスインボイスを受け取り、保管していなければなりません。誤記や記入漏れがあったり、タックスインボイスを紛失してしまった場合には、還付を請求することはできません。
また、商品を輸入した場合は、自社を輸入者として発行された輸入許可書を受け取り、保管していなければなりません。
4. 自社が行う課税供給と関係なく発生した支払い
インプットタックスは、原則としてGST法における課税供給(7%の標準税率または0%の免税税率の対象となる取引)を行うために発生した支出について還付を請求することができます。ただし、GST法の対象外となる不課税取引のうち、第三国貿易や保税倉庫での取引など、もし同様の取引がシンガポール国内で行われていれば課税供給と見なされた取引に関して発生したインプットタックスは、還付請求に含めることができます。
5. 課税供給を行っていない場合
GST事業者として登録し続けていても、課税供給を行わなくなってしまった場合、インプットタックスの還付を請求することはできません。
6. 法律により還付請求が認められていない費用の支払い
以下の費用は、「GST(一般)規則」により、還付の請求が認められていません。
a) 従業員の家族や親戚の福利厚生に関する支払い
b) 乗用車の購入やレンタル、およびその維持走行に関する支払い
c) 余暇、社交、スポーツ関連のクラブの会費、入会金、名義書換料など
d) 従業員の医療費(労働災害補償法または労使関係法における労働協約に基 づくものを除く)
e) 従業員に関する医療・損害保険の保険料(労働災害補償法または労使関係 法における労働協約に基づくものを除く)
毎年、IRASは約3,000の事業者について税務調査を行っており、その調査によって指摘される誤りのうち、最も一般的なものはインプットタックスに関するものだと言われています。万が一、税務調査の対象になっても罰金など課せられないよう、日頃から注意するように心がけましょう。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.343(2019年3月1日発行)」に掲載されたものです。