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ビジネスインタビュー

2011年12月5日

オリックスの「レンタル・サービス」の可能性を探り続ける

ORIX Rentec Singapore Pte Ltd マネージングダイレクター 能口茂さん

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オリックスグループの一員であるオリックス・レンテックは、レンタル分野で世界最大規模を誇り、測定器、コンピュータ、IT機器などのレンタルで顧客にサービスを提供するのが主な業務だ。シンガポールにオリックス・レンテック現地法人が設立されたのは今から16年前の1995年10月。カバーするエリアはシンガポールだけでなく、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム等のASEAN諸国に加え、インド、オセアニアと広範囲に渡る。

 

オリックス・レンテック・シンガポールでは、通信関係の顧客に特化し、その分野に関連する機材を主流に揃えてきた。携帯電話の基地局設置時に、携帯電話からの信号をキャッチして送り返す、といった動作ができているかを確認するための測定器や、近年シンガポール国内の各家庭へも導入が進んでいる光ファイバーのケーブルを敷設する際に終端まで信号がきちんと届いているかを調べるための測定器などを扱っている。

 

シンガポールでは同社のようなサービスを提供する会社はほとんどないが、その状況に安んじることなく、今年6月、ちょうど能口氏がマネージングダイレクターに就任した頃から法人向けコンピュータおよび関連機器のレンタルにも業務を拡大し始めている。その範囲は、オフィスで利用されるパソコンからデータセンターで使用されるサーバやストレージ、ネットワーク機器などをも網羅、複写機やプロジェクタ、テレビ会議システムなどのOA機器も含まれる。現在は営業7人体制でサービスを提供しているが、より良いサービスを提供するためにも需要に応じて順次拡大する予定だ。

 

コンピュータ・IT機器を「レンタル」するメリット

オフィスでコンピュータを導入する場合は、購入あるいはファイナンス・リースというケースが多い。自社のニーズに合った構成のものを入手できるのはメリットだが、さらに高機能な新製品が出ても即座に乗り換えるのは難しい。

 

日本では省令でサーバ以外のパーソナルコンピュータは耐用年数が4年と定められていて、入れ替え時期の目安とされることも多いが、この耐用年数は経済的価値の寿命で物理的寿命ではないため、壊れていないのに処分するのももったいないと、実際には5年以上使い続けているケースも多い。しかし、コンピュータ関連分野の技術の進歩は早く、1、2年もすればより高機能なものが同程度の価格で購入可能。

 

図面を引いたり、画像データを大量に扱うといったコンピュータの処理性能への依存度が高い業務では生産性にも直結するので、機材を適時に入れ替えられるレンタルの活用は有効な策だ。

 

オリックス・レンテックが提供するサービスは大きく3つある。

 

1つは「オペレーティング・リース」と呼ばれるもので、顧客にとっては自社資産にすることなく、かつ初期投資も抑えられる。機材は顧客の希望に合うものを同社が購入し、顧客へ提供。単に既成のサービスをあてはめるだけではなく、顧客が抱える課題・問題などを解決できるように、顧客毎に提案内容を手作りしていく。

 

2つ目は「在庫レンタル」。同社が前もって機材を購入してストックし、顧客からの要望に応じて貸し出すものだ。主に短期的な機材の利用に活用される。

 

3つ目は「中古品販売」である。レンタルから戻ってきた機材を中古品として販売しており、必要機材を手ごろな価格で安心して購入することができる。また、顧客資産の機材を買い取ることも可能だ。廃棄の煩わしさを省くことができる。現在は、上記3つのサービスを柱としつつ、取り扱い範囲を製品や食品の成分検査に使用される科学分析機器および半導体製造装置等にも広げている。

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アジアを渡り歩く中で培ってきたノウハウを生かして

能口氏は、大学卒業後日本国内で3年ほど企業に勤めた後、学生時代に旅行で訪れて以来興味があったタイに4年ほど滞在。友人が現在もバンコクで経営するIT企業の立ち上げに携わった。その後日本に帰国し、オリックス・レンテックに入社。2年ほどでマレーシア駐在の辞令を受け、1997年、現地法人設立のために赴任した。

 

タイの隣国であるマレーシアだが、イスラム文化の影響の大きさはやはり驚きだった。会社の中にマレー系、中国系、インド系の社員がいて、会食のセッティングにもひと苦労。ただ、マレーシアのスタッフには、前向きで明るいという印象がある。「ボレボレ(できるできる)」と細かく考える前に動く彼らに最初は驚かされた。

 

多民族なオフィスで心がけたのは、コミュニケーションを密にすること。「自分も英語の達人ではないが、相手の英語のレベルもバラバラ。身の丈に合った、相手に本当に意思が伝わる言葉を使わないと、学校で勉強してきた英語を格好良く話しても全然伝わらないんだな、と当時良く思いました」という。そのうち、自分の英語がマレーシア風になってしまった、と苦笑いするが、相手と真のコミュニケーションを図ろうとする姿勢の現れだろう。

 

マレーシアで4年間勤務した後、2001年にシンガポールへ異動。2003年にSARSが猛威をふるい、経済的にも打撃を受けた時期と重なったこともあって、シンガポールが苦しんでいる姿が印象に残っている。2004年には韓国へ赴任。現地法人の社長という立場に初めて立った。韓国は旅行でも訪れたことのなかった未知の地。最初は不安が強かった。多様な文化を受け入れる土壌が既にあり、国際化が当たり前になっているシンガポールから行くと、ソウルはやはりコリアン文化の色濃い街に映った。

 

反日感情の強さも懸念していたが、実際に行ってみると現地の人々は日本にとても関心が高く、日本のことを良く見ていて、若い人たちにも日本語学習者がたくさんいた。現在オリックス・レンテック韓国オフィスでは約半数のスタッフが日本語でのコミュニケーションが可能だという。年齢の序列は社会規範となっていることもあってまだまだ根強く、年齢にとらわれずに社内の議論を活性化するにはかなり時間を要した。それまでの経験から海外業務に慣れていたつもりだったが、それを打ち砕かれたのが韓国。カルチャーショックを自分の中で消化するのに時間がかかり、苦労も多かったが、現地のスタッフや周りの助けもあって7年間業務を遂行できたことは良い経験になった。

 

今年シンガポールに戻ってきて、以前と大きな違いを感じることのひとつが域内全体のプレゼンスが上がったこと。「以前は中国の影に隠れている印象でしたが、アセアンという一つの大きな経済圏になってきています。欧米や中国の経済減速の影響は受けるでしょうが、域内の力がやはり強い。アセアンの成長を私どもも取り込んでいきたいですね」と今後のビジネス拡大への意欲を語った。

 

さらに、シンガポールは環境への配慮、水問題、電力の流れを制御・最適化できる送電網であるスマートグリッドなどに国を挙げて注力しているので、同社としても積極的に関与していきたいと考えている。「現在シンガポールは『スマート・シティ』というものを進めていて、そのために様々なテストや実験が今後実施される見込みです。私どもの持つ電気測定器などが役に立てるのではないかと考えています」

 

能口氏の好きな言葉は「人生万事塞翁が馬」。高校時代に漢文の授業で聞いて以来頭の奥に常に残っていて、好調な時に調子づいている自分を戒めたり、辛い時にいつまでもめげていても仕方ない、いつかきっと良いことも来るだろう、と自らを鼓舞しているという。この言葉が、海外赴任15年目になる氏が様々なことを乗り越える原動力でもあるようだ。

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.202(2011年12月05日発行)」に掲載されたものです。
取材=石橋雪江

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