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スペシャルインタビュー

2018年12月27日

愛は狂気。 主演作品『寝ても覚めても』上映で初来星

俳優・東出昌大さん

 2018年11月28日〜12月9日に National Museum of Singapore (シンガポール国立博物館)で開催された『シンガポール国際映画祭』で、東出昌大さん主演の映画『寝ても覚めても』が上映されました。『第71回カンヌ国際映画祭』コンペティション部門正式出品もされた、海外でも高い評価を得ている作品です。上映会にあわせて初来星した東出さんに、編集部が特別インタビュー!同作品で東出さんは、見た目がそっくりな別人の男性2人と出会い運命に翻弄される女性・朝子の“運命の人”を一人二役で演じています。自由奔放な麦(バク)、真面目で優しい亮介。インタビューを通して、東出さんにもその両方のキャラクターと通じる多面的な魅力を感じました。今回AsiaXで初めて語られるサイドストーリーもあり、必読ですよ。

 

 

初めて来星されたそうですが、シンガポールの印象はいかがですか?
 シンガポールは意外に緑が多いだけでなく、ものすごく綺麗で、多国籍、近代的で驚きました。以前バックパッカーで旅をしていた時期がありますが、特にフィリピンに旅したことが印象的で、同じアジアなのに「この差は?」と驚きました。

 

映画のテーマは“リアルな愛”。愛は移り変わるもので、白黒なくグレーで、だから美しい瞬間や生々しさがあり、残酷でリアルなのですよね。永遠に続くと思うから、執着や苦しみが産まれる“なまもの”だと映画から感じました。東出さんは愛について、どんなコンセプトをお持ちですか?

 

 自分が三十代になって感じることは、付き合った人と結婚するかな?と思っても続かないこともあるし、愛は移り変わる、変わっていくものだと実感しています。フランスのカンヌ映画祭でフランスに行った時にとても印象的だったのが、現地記者の方に「この映画はジャパニーズ・ホラーか?」と聞かれたことです。監督は「愛は狂気だから、その解釈もある」と答えられましたが、この映画は愛が描かれている映画で、愛はある意味狂気という見方は、確かにその通りだと思います。

 

不変で不完全なものである“愛”をどれだけ信じられるか、そこにどんな価値をおくかは、相手というより自分への信頼感な気がします。その点、麦(バク)が“愛”自体の象徴のように思います。麦の愛、亮介の愛がそれぞれ象徴するものは何だと東出さんは思いますか?

 

  ここだけの裏話で公表されていないサイドストーリーですが、原作者の方が、実は書いている時に「麦は宇宙人をイメージしている」とおっしゃっていました。『竹取物語』の月からの使者をイメージしたキャラクターだとおっしゃっていたのです。原作を拝読しても、麦は人に対して遠慮がなくて、振る舞いが爬虫類的な遠慮のなさがあり、愛に貪欲というか、欲求に直通している、あからさまな人です。逆に、亮介はとにかく優しい人です。朝子に遠慮して顔色に常に気を配るなど、優しいから生きづらい部分があります。ただ、最後のシーンで亮介が“汚いものを汚い”と言えたところで、僕としては亮介が(清濁ありのままを)受け入れたんだ、とほっとしました。

 

 

海外に住むのは、正直日本で考えられないハプニングも多々ありますが、東出さんはハプニングに強そうです。海外に住みたいと思ったことはありますか?

 

  海外に住みたいと思ったことはありますね。フィリピンに旅行した際に感じた、アジア的なカオスが結構好きです。

 

シンガポール在住日本人は、約3万人います。東出さんが好きな落語や剣道のように、日本の伝統文化を広めて頑張る日本人や、AsiaX読者層のようにエキスパートとして仕事をしている日本人が当地に沢山います。もし東出さんがシンガポールに住んで、俳優でなかったらどんなことをされていると思いますか?

 

  ジュエリーデザイナーを目指していた時があり、今でも友人などから製作受注することもあります。もしシンガポールに住んで、俳優でない仕事をしていたとしたら、ジュエリーを作っているかもしれません!

 

 

あとがき
 2018年は、アジア映画が世界を席巻した年!『クレイジー・リッチ!』の北米週末興行収入連続第1位の快挙に、シンガポール人映画監督として初のロカルノ国際映画祭最優秀賞『A Land Imagined』と、これまであまり見向きもされなかったアジア系映画が、静かに世界で革命を起こしつつある時風。
 東出さんは、とにかく受け答えが丁寧で真摯。自分の言葉で語りその内容が奥深い、語彙が豊富な方でした。歴史、アウトドアなど多趣味であるだけでなく、趣味を極めるレベルまで高める東出さんは、自分の血肉になっている経験や思考の幅が広い印象を受けました。今後、アジア映画に出る機会があれば嬉しいと語っていましたが、その理由は“香港や台湾映画が好きで、ナショナリズムを尊重しつつ独立独歩なところと文化背景が好き”だから。ぜひアジア映画に出演して、さらなるアジア映画旋風を巻き起こして欲しいですよね!

 

参考:
・映画『寝ても覚めても(英語名タイトル:Asako I & II) 』
濱口竜介監督の商業映画デビュー作

公式HP: http://netemosametemo.jp/

シンガポール国際映画祭、『寝ても覚めても』紹介

Asako I & II

・シンガポール国際映画祭(Singapore Film Festival)
1987年創立、シンガポールで最も長い歴史を誇る映画イベント

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.341(2019年1月1日発行)」に掲載されたものです。取材・文: 舞 スーリ

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