シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP最終回【アイリスオーヤマがヒットを飛ばし続ける秘密】

中小企業のための 勝つ!組織のつくり方

2018年11月30日

最終回【アイリスオーヤマがヒットを飛ばし続ける秘密】

「あなたの会社は、経営幹部と現場の社員の関係は、良好でしょうか」。いきなりそんなことを尋ねられても、すぐに判断ができないかもしれません。では、あなたの会社では以下のような問題は起こっていないでしょうか。

 

・現場社員から業務改善案が上がってこない
・現場社員から新しい製品案が出てこない

 

もし、当てはまるのであれば、残念ながら、あなたの会社は、経営層と現場が良好な関係を築けていないと言わざるを得ません。両者が良好な意思疎通を図れている企業では、改善案や製品案は自然と出てくるからです。

 

意思疎通がうまくいかない原因のひとつとして、あなたや経営幹部が現場の仕事を理解していないことが挙げられます。つまり、あなたや経営幹部の発言や指示が、「机上の空論」になっている可能性があるのです。その場合、上からの発言や指示が出るたび、現場社員は疲弊し、実際に態度には出さないだけで、不満を溜め込んでいきます。実際に、この状態に気付かず、放っておいたためにあるタイミングを機に、大量に退職者が出たり、管理職の休職者が続出したりする企業を私は何度も見てきました……。現場の状況を良く知り、現場の声を吸い上げる仕組みを作ることは、とても難しいことですが、長期的に企業を経営し、成長させていくには、非常に重要なことです。

 

そんな中、家庭用プラスチック製品の製造・販売において高いシェアを持つアイリスオーヤマは現場の声を吸い上げる仕組みを使って、事業を成長させています。アイリスオーヤマの製品開発は、自社の技術者たちが、他社製品を実際に使い、不満点、改善点を徹底的に洗い出すところから始まります。1つの製品につき、100個の改善点が挙がることも普通というから驚きです。そして、それらの改善点を解決するための製品案を技術者たちが練り上げていくのです。その後、毎週月曜の会議でプレゼンし、社長を納得させることができれば、晴れて製品化というわけです。

 

このように、アイリスオーヤマには、現場社員の声を上手に吸い上げ、素早く製品に反映させる仕組みが整っており、少人数でも、様々なヒット商品を生み出すことができたのです。

 

例えば、1987年発売のプラスチック製の犬小屋。当時、犬小屋と言えば、ベニヤ板で作られたものが主流でしたが、雨に弱く、すぐに壊れるばかりか、尿の匂いもこもりやすく、掃除がしにくいというデメリットがありました。そしてちょうどその頃、人間にとって犬が「番犬」から「家族の一員」へと変わりつつあったことに目をつけ、犬がより快適に過ごせるプラスチック製の小屋を発売したのです。この製品は、ベニヤ板に比べ、水に強く、匂いも付かず、掃除も簡単ということから、瞬く間に爆発的なヒット商品となりました。

 

また近年では、プラスチック製のLED電球がヒット商品となりました。当時、発売されていたLED電球は、アルミ製で重く、取り付けが不便というデメリットを持っていました。アイリスオーヤマはそのデメリットに目をつけ、プラスチック製のLED電球を発売しました。この製品は従来のアルミ製のものと比べると、最大50%もの軽量化を実現し、多くの主婦の悩みを解決し、ヒット商品となりました。

 

人々は、痒いところに手が届く商品を喜び、購入します。そのことを考えると、アイリスオーヤマをはじめ、現場の声をしっかりと受け止め、製品化に繋げられる企業が、長く発展し続けるのは当然と言えます。

 

あなたの会社は、現場の社員の声に耳を傾けているでしょうか。しっかりと現場の意見を吸い上げているでしょうか。この仕組みを構築するだけで、あなたの会社も、お金をかけずともヒット商品を連発し、右肩上がりに売上が上がり続ける状態をつくることができます。

 

今一度、ぜひ、現場の社員への姿勢について、考えてみてください。

 

(2018年8月28日配信「経営のヒント」から引用)

 

プロフィール
嶋津 良智(しまず よしのり)
・一般社団法人 日本リーダーズ学会 代表理事
・リーダーズアカデミー 学長
・セミナーズアカデミー 学長
・早稲田大学 エクステンションセンター講師

日本唯一の『上司学』コンサルタント。大学卒業後IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中で最年少営業部長に抜擢され、就任3ヵ月で担当部門の成績が全国No.1に。28歳で独立、2004年5月株式上場(IPO)を果たす。業績向上のための最強の組織づくりをノウハウ化した独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界15都市でビジネスセミナーを開催。シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計150万部を超える。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.340(2018年12月1日発行)」に掲載されたものです。

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