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会計・税務相談

2018年8月29日

Q.サービス会社の税務上の取り扱いに変更があると聞きましたが、どのように変更されるのでしょうか。

サービス会社の税務上の取り扱いの変更について

現在、費用の5%を課税所得として法人税を申告しているサービス会社のうち、移転価格ガイドラインに定められる要件を完全に満たしていない会社は、2020賦課年度(2019年終了会計年度)までに通常の営業会社に適用される税額計算の方法に変更して法人税を申告しなければなりません。

 

Q:そもそも、サービス会社とはどのような会社を指すのでしょうか。

A: ここで言うサービス会社とは、専ら関連会社に対して補助的な業務を提供する会社を指し、シンガポールに進出する外資系企業によく利用されている形態の一つです。このような会社は、自ら営業活動を行って収益を得ることがありませんので、多くの場合において費用のみが発生し、サービスの受益者である関連会社からその活動資金を送金してもらっています。関連会社に提供するサービスは、経営管理、技術支援、調達、総務、顧客管理など、多岐にわたります。シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、このような会社に対し、費用の5%を課税所得とする簡易申告を認めていますが、移転価格税制が正式に導入されてからは、この簡易申告の適用について、移転価格ガイドラインに定められた要件を満たす会社に限定しています。

 

Q:移転価格ガイドラインでは、簡易申告の適用についてどのような要件が定められていますか。

A: 以下の全ての要件を満たす場合、費用の5%を課税所得とする簡易申告が認められます。
① 移転価格ガイドラインに定められる「経常的な支援業務」のみを提供していること
② 当該支援業務と同様の業務を関連会社以外の第三者に提供していないこと
③ 5%の課税所得の算定の前提となる費用について、直接経費、間接経費、その他営業経費を含む当該支援業務の提供に関して発生した全ての費用が含められていること

 

Q:移転価格ガイドラインに定められる経常的な支援業務とは、どのような業務を指すのでしょうか。

A: 以下の13分野の業務が、経常的な支援業務として認められています。

IRASが実施した調査では、上記の経常的な支援業務以外のサービスを提供する会社にも簡易申告制度が広く利用されていることが判明したため、今後は、より厳密に適用する方針が打ち出されました。
 

Q:簡易申告制度の要件を満たさない場合、法人税は今後どのように計算されますか。

A: サービス会社が前述の要件を満たさない場合、通常の営業会社と同じ方法で法人税を計算することになり、その計算の過程では以下のような税務上の調整がなされます。
・ 益金不算入となる所得の減算
・ 損金不算入となる費用の加算
・ 税務上認められる追加控除の対象となる費用がある場合、その適用
・ 税務上のキャピタルアローワンスに基づく減価償却費の損金処理
・ 寄付金控除の適用
・ 未控除キャピタルアローワンスおよび欠損金がある場合、その繰越
・ 外国税額控除の適用
通常の営業会社と同じ方法による税務申告では、税額計算に関してこれまでより多くの情報が必要になります。ただし、悪いことばかりではなく、会社によっては、簡易申告制度による場合より納税額が少なくなることもあります。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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