シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP日本の良品を世界へ、インバウンドとアウトバウンドの視点から

座談会

2018年2月28日

日本の良品を世界へ、インバウンドとアウトバウンドの視点から

AsiaX:アジア展開にはプロダクトアウトではなく、まずはマーケットインの発想が必要かもしれません。

 

坂本:日本マーケットと海外マーケットが欲しいもの、あるいは生産者が出したいもの、これらはたいていシンクロしていません。ローカルの方々は日本で名の知れたものを安い値段で買いたいし売りたいと思っています。それ以上の商品は時間をかけて啓蒙していく必要があります。生産者によっては、当地の市場調査もせずに日本ですごく売れているので、シンガポールでもこの味、デザインで絶対売れますから売ってくださいという。売りたいなら当地に来て、スーパーなどに足を運んで実際何が求められているのを調査すべきですし、そのうえで、すぐ売れる商品でなければ長期的に取り組んでほしい。これは切実で、なかなかギャップが埋まってこない。そこに対して我々に何ができるか、日々考えるところです。

 

岡田:「うちは良いものをつくるんだ」、と長年決め込んでいる生産者も多い。そこを無理に変えるより、若い世代で軟らかい発想ができる層に働きかけていくことで今後変化があればいいなと思います。

 

寺澤:良いものを作れば売れるというプロダクトアウトの思考が多く、市場のニーズに合わせて商品を作るマーケットインの発想が弱い。ものを作って売るためにやるべきことは日本国内でも海外でも同じです。たとえば食品メーカーさんにありがちなのが「美味しいものを作れば商品は勝手に売れるんだ」、という発想。美味しいだけでは売れない、消費者ニーズに応えることが大切だということを本当に気づいて欲しい。

 

坂本:実際、海外で売り出そうとして酒の名前や種類をそのままローマ字で書かれる。どれを品名にすればいいかわからず仕分けもしにくい。海外向けの名前にしてラベルを張ってほしいと言っても受け入れてもらえない。売りたい気持ちがある以上、この辺りの工夫があるといい。日本酒に限らず、特に中小企業は、次世代に生き残るためにどうすればいいのか考えていく必要があると思います。海外に出るとそれをよく感じますね。

 

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AsiaX:時代にどう順応していくか。一方で伝統を引き継ぐ人間もいないと日本の良さが消えていく不安も残ります。

 

坂本:例えば和食のように文化であれば残る。ただし、どの部分が残るかを見極めて目指していく必要がある。海外で益々日本の食文化はマーケットが広がっていくと思います。ではそこにどう乗っていくのか、特に中小企業がその点を考えてくれると、我々も支援したくなる。

 

AsiaX:海外展開の方針を決めていく上で、どんなアドバイスをされていますか。

 

田中:ターゲットを決めるための市場調査の重要性をアドバイスします。例えば、リンゴなどそのものが一般的に普及していれば次にブランドが通じる下地がある。下地がなければ、どんないい商品であってもブランド価値がその上に成り立たない。またその商品をどの層に売るのか等、自分の商品がシンガポールという市場でどう展開できるのか、ブランドとしてまだ出せないようなら、その商品をどう広げていくのか。日本では売れていても、海外で初めて見られる商品に高い値段をつけても売れるとは限りません。まずは市場があってこそですので、市場調査をしてターゲットをどうするかを決めるべきでしょう。

 

坂本:マーケットにあわせて良いものを安く大量に提供する、または少量でも高級品として高く設定するなど、当然二極化はありだと思います。マーケットをかなり的確に捉えたブランド戦略の好例がシャトレーゼ。日本では庶民的なイメージがあるが、シンガポールではギフトにも適した高級品のイメージでブランディングして成功しており素晴らしいと思う。

 

寺澤:私は洋菓子業界出身なのでこちらでも色々食べ比べましたが、まだまだ日本の洋菓子店のレベルに遠いですね。ということは、こちらでレベルの高い洋菓子を提供すれば、これから市場がどんどん広がっていくと思います。日本には多くの素晴らしい洋菓子店があるので、今後進出できるチャンスが大きい。それも市場調査の結果の一つです。

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