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座談会

2018年1月26日

新年である2018年、節目にあたる2020年、各業界の最新事情と未来予測

街づくりの巧さ、産官学の連携
シンガポールが優れていること

AsiaX:なるほど、動線が日本各地に広がっているのですね。ちなみに、空港事情や道路事情など、日本とシンガポールを比較して、日本の方が優れているもの、シンガポールの方が優れているものって、何かありますか?

 

藤井:日本は移動にお金がかかりますよねえ。シンガポールは道路も公共交通機関の料金も破格に安いし、国全体の道路がきちんと設計されていますから渋滞が起こらないところが魅力的。

 

西村:確かに、そうですね。旅程を組む際、現地着時刻が読めないジャカルタやバンコクと違って、シンガポールはチャンギ国際空港から市内への移動がスムーズです。シンガポールは集客地としてもよくできていますよね。カジノや国際会議場があり、Integrated Resort(IR)として完璧に機能している。

 

AsiaX:街づくりが上手ですよね。やや集客力が弱いビルにドンドンドンキのような注目が集まる店舗を起爆剤として誘致するなど、国が上手に協力している印象があります。

 

岡部:政府の積極的な協力姿勢は教育の分野においても言えますよ。欧米の有名大学とのコラボレーションをサポートしたり、研究開発への予算バックアップをしたり。

 

佐藤:シンガポールが優れているといえば、学びの姿勢が挙げられると思います。日本の医療現場の視察をしたいとアテンドを依頼されることがあるのですが、何を見たいのか目的意識がはっきりしていて、視察の視点が非常に深い。

 

岡部:国民性として勉強熱心なのですね。

 

佐藤:日本だけでなく欧米諸国へも行っていて、各国の良い点を上手に組み合わせて自国に導入しています。日本は高齢者医療の先進国と言われてきましたが、シンガポールの追い上げはすごいものですよ。ここ1〜2年で建設されているコミュニティホスピタルという高齢者向け医療施設の環境は、日本と段違いに良いですから。シンガポールは前例を持たないぶん、良いと思ったらどんどん変えていく。今後、ロボットなども取れ入れていくのではないでしょうか。

 

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コミュニティホスピタルの利用者は、主に先端医療を提供する病院で治療を受け、その後のリハビリテーションが必要な人びと。写真はYishun駅から徒歩10分の「Yishun Community Hospital」。

 

2020年はどうなっている?
識者の未来予測

AsiaX:変化が早くもたらされる国ですから、その動向には常にワクワクさせられます。となると、皆さんの2020年・未来予測が聞きたいところです。

 

岡部:数年では変わらないかもしれませんが……職のバラエティが広がっているといいな、と願っています。というのも、この国がこれだけ教育に力を入れているのは産業が少ない点が影響していると思うのです。

 

AsiaX:学歴が求められるところを、国民がこぞって目指すために競争が激化してしまう、ということですね。

 

岡部:エンターテインメントに興味がある子どもや、スポーツが得意な子どももいます。国が豊かになると文化・芸術等のサービス産業も盛んになると思うのです。学力で勝負するだけじゃない職業も、今後増えていくのではないか、そうなるといいな、と。

 

西村:エンターテインメントが伸びるのはいいですね。シンガポールはエンターテインメント・シティとしての役割を担っていくといいと思うんです。今後、カンボジアやミャンマーなども含め、周辺諸国の経済が発展すると、中級階層が増加します。お金持ちが増えると、旅行者も増える。となると、周辺国のどこからもアクセスのいいシンガポールの渡航地としての価値が上がるはずですから。

 

佐藤:医療分野では、AI等を導入し、疾病予測を始めるのではないかと予想しています。シンガポールの公立病院の全患者のデータは一箇所に集めることになっているので、国民の健康を守る上で、政府はそれらのデータを活用してくるだろうな、と予想しています。

 

藤井:それはいいですね。以前、インドネシアでMRを撮ったのですが、日本の病院に持って行ったらCTを撮り直しになってしまって。データを一本化してもらえるのは患者にとってもありがたい。

 

佐藤:効率の良さは重要ですよね。もう1つの予想は、高齢者ケアの場が病院から地域施設に移行するのでは、ということ。結果的に病院の待ち時間が減り、病院スタッフにとっても、患者にとっても効率が良いはずです。

 

藤井:佐藤先生や岡部さんのお話にもありましたが、産官学が目的に向かって連携し、実行に結びつけていて、それが極めて早いのが特徴の国ですよね。2020年であれば、きっとEVを使った自動運転のシェアリングカーあたりは住宅街を走っていそうな気がします。あまりスピードが出ませんが、最寄り駅から家近辺までのちょっとした距離であれば速さは気にならないでしょう。実現するために協力するメーカーはどこかなあ、中国かなあ。

 

AsiaX:日本メーカーだと嬉しいですね(笑)。2018年、まだまだ始まったばかりですが、夢膨らむ話をお聞かせくださり、ありがとうございました!

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.330(2018年2月1日発行)」に掲載されたものです。

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