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法律相談

2017年5月31日

Q.取引先に対し、納入した商品の支払いを求めているのですが、まったく支払いに応じてもらえません。それほど高い金額でもないので、弁護士を雇って裁判をするのもどうかと思っていたところ、少額訴訟という制度があることを聞きました。これはどのような制度なのでしょうか。

シンガポールの少額訴訟について

A:少額訴訟とは、小規模な紛争を迅速かつ低コストで解決するために手続きが簡易化された民事訴訟で、国家裁判所(State Courts)における少額事件法廷(Small Claims Tribunals)において行われます。

 

Q:少額訴訟は、どのような事件が対象とされているのでしょうか。

A:少額訴訟で請求できる金額は、原則としてS$10,000以内、当事者間で書面による合意がある場合にはS$20,000以内とされています。また、対象となる請求の種類にも限定があり、物品の売買やサービスの提供に関する契約で生じた請求や、期間2年以内の住居の賃貸借契約で生じた請求などに限られています。さらに、少額訴訟で請求できるのは、請求権が発生してから1年以内のものに限られます。

 

Q:少額訴訟の手続きの流れについて教えて下さい。

A:少額訴訟は、大別すると、調停手続(Consultation)と審理手続(Hearing)の2段階に分けられます。調停手続では、書記官(Registrar)を交えて、原告と被告との間で和解に向けて話し合いが行われます。和解に至らない場合には、審理手続が行われます。ここでは、審判官(Referee)の前で、当事者双方が証拠を示しつつ自らの言い分を主張します。証人がいる場合には証人から話を聞くこともあります。審判官は、双方の言い分を聞いた上で、最後に命令(Order)を下します。

 

Q:自分だけで裁判所に行くのは不安です。弁護士に訴訟代理人として出席してもらうことはできますか。

A:少額訴訟では、弁護士などが当事者を代理して法廷に出席することは認められておらず、当事者本人が出席する必要があります。また、当事者本人が出席する場合であっても、弁護士を法廷内に同伴させることは基本的に認められていません。

 

Q:英語が苦手なので、通訳を同伴したいのですが可能でしょうか。

A:法廷の運用にもよりますが、通訳の同伴は可能であるといえます。少額訴訟では、日本語の通訳が必要な場合、自ら手配し、費用も自分で負担する必要があります。

 

Q:もし被告が法廷に出席しない場合にはどうなるのでしょうか。

A:被告が欠席した場合には、書記官や審判官の判断により、欠席判決(Default judgment)が下されることがあります。

 

Q:少額訴訟で勝訴した場合には、支払いを受けられると考えてよいのでしょうか。

A:勝訴したとしても、被告が任意に支払わない場合には強制執行の手続きを取る必要があり、当然に支払いを受けられるわけではありません。なお、強制執行の前提として、被告に執行可能な財産がある必要がありますので、訴訟を提起する場合には、事前に被告の財産状況を可能な範囲で調査しておく必要があります。

 

Q:審判官の判断に不服がある場合、不服申立てはできますか。

A:少額訴訟について高等法院(HighCourt)に不服申立てができるのは、その事件が少額訴訟の対象外であった場合か、審判官が法律上の問題について判断を誤った場合に限られています。審判官の事実認定に誤りがあることが理由の場合は、不服申立てをすることはできません。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 清水 洋介

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注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.322(2017年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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