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シンガポールの“税金あれこれ”「会社がやってくれるから」で本当に大丈夫?

2016年9月14日

シンガポールの“税金あれこれ”  第4回 シンガポール居住者のための株式・不動産に関する税務

解説:AGSコンサルティングシンガポール株式会社 公認会計士 林竜太(はやし りょうた)氏

 

皆さんこんにちは、AGSコンサルティング公認会計士の林竜太です。

 

今回は、シンガポール居住者のための株式・不動産に関する税務について解説します。皆様の中には日本に株式や不動産を保有されている方もいらっしゃると思います。そこで、シンガポールに居住している間にそれらの資産を売却した場合、日本に帰国した後に売却した場合と比べてどのような税務上のメリットがあるか、ケーススタディを通じて説明していきます。

 

ケース1

「私は日本の上場株を保有していますが、含み益が大きくなってきたので売却を検討しています。シンガポール居住者(日本非居住者)である間に売った方が税務上得なのでしょうか?」

 

結論としては、原則的にシンガポールに居住している間に売却した方が得です。

 

日本居住者の場合とシンガポール居住者の場合を比較してみましょう。

 

(1) 日本居住者の場合

①日本の税金

株式譲渡益に対して所得税15%、住民税5%の合計20%が課税されます(復興特別所得税を除く)。

 

(2)シンガポール居住者の場合

①日本の税金

日本の国内源泉所得のみに対して課税が行われます。株式譲渡所得に関しては原則的に日本の国内源泉所得と見なされないため日本で課税されません。しかし、一定の場合については日本の国内源泉所得となり課税されますので注意が必要です。

②シンガポールの税金

株式譲渡益は、一定の例外はあるものの原則的にキャピタルゲイン非課税の対象となり課税されません。

 

まとめ

日本居住者とシンガポール居住者が日本の上場株を売却した際の税率は以下の通りです。

日本の税金 シンガポールの税金
日本居住者 20%課税 無し
シンガポール居住者 原則非課税 原則非課税

 

例えば株式譲渡益が1億円の場合、日本に居住している時に売却すると売却益の20%、つまり2,000万円を納税する必要がありますが、シンガポールに居住している間に売却すれば無税ということになります。

 

ケース2

「私は日本にマンションを保有していますが、値段が上がってきたので売却を検討しています。シンガポール居住者(日本非居住者)である間に売った方が税務上得なのでしょうか?」

 

結論としては、シンガポール居住者であるうちに売却すると、住民税分(5%または9%)を得することになります。

 

日本居住者の場合とシンガポール居住者の場合を比較してみましょう。

 

(1) 日本居住者の場合

① 日本の税金

不動産売却益に対して、下記税率表の所得税と住民税が課税されます(復興特別所得税を除く)。長期保有と短期保有の場合で税率が異なります。譲渡する不動産につき、譲渡した年の1月1日において保有期間が5年を超えるものは長期保有、それ以下のものは短期保有に分類されます。特例による軽減税率等もありますが、今回は原則通りの税率を記載しています。

所得税 住民税 合計
長期保有 15% 5% 20%
短期保有 30% 9% 39%

 

(2) シンガポール居住者の場合

①日本の税金

株式売却の場合とは異なり、日本の不動産の譲渡所得については日本の国内源泉所得と見なされます。従って非居住者が譲渡した場合でも日本で所得税の課税が行われます。しかし、非居住者に対して住民税は課税されません。

②シンガポールの税金

シンガポールの国内源泉所得のみに対して課税されます。日本の不動産の譲渡所得は、シンガポールの国内源泉所得ではないため課税されません。

 

まとめ

日本居住者とシンガポール居住者が日本の不動産を売却した際の税率は下記表の通りです。

日本の税金 シンガポールの税金
日本居住者 20%または39%課税 無し
シンガポール居住者 15%または30%課税 非課税

 

例えば、日本居住者が長期保有している不動産の譲渡価額(売却価額)が2億円、取得費(購入価額)および譲渡付随費用(仲介手数料等)の合計が1億円の場合、譲渡所得(売却益)の1億円に対して所得税として1,500万円、住民税として500万円、合計で2,000万円を納付することになります。一方でシンガポール居住者が同様の不動産を売却すると所得税の1,500万円のみを納付することになります。

 

以上、シンガポールに居住している間に株式や不動産を売却した方が税務面のメリットが大きいため、対象資産をお持ちの方はご検討いただいてもいいかもしれません。

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