2016年5月2日
せとうちホールディングス(SETOUCHI HOLDINGS ASIA PACIFIC PTE LTD)セレター空港からクアラルンプールへ ビジネス需要に応える小型機を展開
経済成長に伴いアジア域内の移動が増える中、小型飛行機の需要増加も見込まれている。日本で陸上機・水陸両用機の販売・運航などを手掛けるせとうちホールディングスは、こうした需要に応えるためシンガポール現地法人を設立した。
シンガポールのほかフィリピン、豪州、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、インド等で小型機を販売しており、これらの国へのアクセスの良さからシンガポールに拠点を設立することを決めた。
現在数ヵ国で会員向け運航事業も計画している。同社が注目しているのが、シンガポール北部のセレター空港からマレーシアのクアラルンプールの手前に位置するスバン空港をつなぐ便。約8人乗りのチャーター便は、日本企業による海外視察などビジネス向けの需要があるとの見方だ。
「セレター空港は、チャンギ空港に比べ小規模なので出入国の手続きも簡単です。またスバン空港は、クアラルンプール市街地からも近いためアクセスも良好と言えます」。同便のメリットについて同社執行役員の阿部宏憲氏はこう話す。
セレター空港を基点に、レジャー向けの事業展開も図る。会員企業向けに、マレーシアのリゾート地であるティオマン島行きサービスを提供することなどを検討中だ。
世界一のゼネラル・アビエーション会社へ
同社の小型機は、米国に拠点を置くクエストエアクラフト社のコディアックという機体。クエスト社とは元々代理店契約を締結しており、2015年2月にはせとうちホールディングス本社がクエスト社を買収した。
コディアックは燃費が良いことに加え、離着陸に必要とする距離が約300メートルと競合他社の半分程度で済むのが特徴。もとは過疎地での人道支援を目的に開発されており、「小型機の4WD」と呼ばれるほどの安定性を持つという。
「コディアックなら荒れ地にも着陸することができます。滑走路が整っていないところも多いアジアで運用するには適していると言えるでしょう」と阿部氏はコディアックの利点について説明する。
阿部氏は今後のビジョンについて「米国や豪州には小型飛行機を利用する文化があります。これらの国々にはゼネラル・アビエーション(軍用と定期航空便を除く航空事業の総称)の企業が何十社もあり、小型機専用の空港もあるほどです。われわれもそうした文化を、シンガポール含めた近隣国に根付かせるとともに、世界一のゼネラル・アビエーション会社を目指したいと考えています」と語る。
セレター空港には、オフィスのほかショールームも構える予定。現在シンガポール政府は、チャンギ空港を拡張する一方、ゼネラル・アビエーションの基地としてセレター空港の整備も進めているといい、こうした動きも追い風になりそうだ。
会社プロフィール
小型機事業や建設事業などを手掛けるせとうちホールディングスのシンガポール現地法人。シンガポールを含むアジア太平洋各国で、小型機の販売・運航などを手掛ける。
SETOUCHI HOLDINGS ASIA PACIFIC PTE LTD
66 Seletar Aerospace View, Singapore 797509
Tel: 6659-0712
取材後記
5歳までドイツで育ち、米国の大学を卒業後、長く外資系企業の日本法人に勤めてきたという阿部氏。モルディブを訪れた際、そこで見た水上飛行機に魅せられたことが転職の動機と話す。
仕事のポリシーは「いい加減だと愚痴が出る。中途半端だと言い訳が出る。一生懸命だと知恵が出る」。仕事観に影響を与えた人物は前職の社長で、組織論や日本の文化など多くのことを学んだという。