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法律相談

2016年4月4日

Q.シンガポールにおけるオンラインメディアの規制について教えて下さい

シンガポールのオンラインメディア規制

A:シンガポールでは、「インターネットは社会にとって有益なもので、過度に規制するべきではない」が、他方で、「シンガポールの人種や宗教間の調和、国家の利益を損なう内容の発信は制限されるべき」というスタンスが取られています。その結果、テレビやラジオといった従来の放送事業に加え、インターネットを用いて情報を発信するメディアにも広く、放送法やメディア開発庁(MDA)の定めるルールなどによって規制が及んでいます。

Q:ニュースサイトのライセンス制度とは?

A: インターネットの発達により、テレビなどに適用されてきた従来の規制が適用されないニュースの配信者が増えたことから、従来のメディアとの一貫性を図るため、2013年に、情報の受け手への影響力が大きい場合(次の①と②の双方を満たす場合)には、シンガポールを拠点とするオンラインニュースサイトやニュースアプリの運営者に対して、メディア開発庁からのライセンス取得が義務付けられました。

 

①2ヵ月以上にわたって、平均で週1本以上、シンガポールに関するニュースを配信していること

②月5万件以上のシンガポールのIPアドレスから、①と同期間の2ヵ月にわたってアクセスがあること

 

これらのニュースサイトやニュースアプリの運営者は、メディア開発庁からライセンスを受けるにあたり、テレビや新聞と同様、5万Sドルの保証金を支払う必要があります。このライセンスを受けた運営者は、メディア開発庁の定めた基準に従って、ニュースを配信することが義務付けられます。ニュースの内容がメディア開発庁の禁止基準に違反する場合(例えば公共の利益や秩序、または善良な風俗に反するプログラムなどを配信した場合)には、メディア開発庁の指示に従い、24時間以内に違反する内容を削除することが義務付けられます。

 

Q:規制の対象となる「ニュース」とは?

A: 「ニュース」とは、コンテンツを自らが提供するか第三者が提供するかを問わず、シンガポールの社会、経済、政治、文化、芸術、スポーツ、科学などついて公共の関心事となる情報を含むものが該当し、どの言語か、有料か無料か、定期配信か不定期配信かも問わない、とかなり広く定義されています。

もっとも、メディア開発庁が2013年5月31日にフェイスブックに投稿したポストでは、個人で時事問題やトレンドなどを発信するウェブサイトやブログなどは規制の対象とはならないとされています。

 

Q:ニュース以外のコンテンツ提供に関する規制は?

A: ビジネス、政治または宗教的な目的で、インターネットを介してコンテンツを提供する者は、国内外を問わず(ただし、個人の場合にはシンガポール在住に限ります)、「インターネットコンテンツプロバイダー」として放送法の規制の対象となります。これには、ウェブ出版社やエンタメ動画配信業者、サーバーの管理者なども含まれます。このインターネットコンテンツプロバイダーに対しては、メディア開発庁から自動的に「クラスライセンス」という資格が付与されます。その結果、インターネットコンテンツプロバイダーは、同メディア開発庁が規定する条件(Internet Class License Conditions)や、インターネット行動規範(Internet Code of Practice)といったルールに従う必要があり、例えば、公共の利益や秩序、または善良な風俗に反するプログラムなどの配信は禁止されます。

 

 

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 高橋 宏行

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注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.299(2016年4月4日発行)」に掲載されたものです。

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