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シンガポール星層解明

2016年3月21日

巨大「空ナカ」として飛躍を続けるチャンギ国際空港の成長秘策

「空ナカ」を志向するチャンギ国際空港は、日本の「駅ナカ」から学ぶべし

 

前述の通り、チャンギ国際空港の小売と飲食の売上高は中長期的に増加が続くと考えているが、東南アジア域内の出張でほぼ毎週利用している筆者の視点から、チャンギ国際空港が新たな次元で利用者の購買体験と利便性を高めつつ、更なる売上の拡大に向けて検討すべきアイデアを2点ほど述べて本稿の結びとしたい。

 

1点目は「隙間時間の消費サービス」の創出である。チャンギ国際空港で搭乗時刻まで時間をつぶそうとなると、大多数の人は飲食店に入るか搭乗ゲート付近の座席に座って待つか、空港内の店舗をブラブラ散策するくらいしか選択肢がないのが現状である。マッサージやスパなどのリラクゼーションサービスは計3店舗あるものの、店舗ロケーションの視認性は低く、隙間時間を利用して気軽に入店できる環境ではない。特にチャンギ国際空港の出発トランジットラウンジから各搭乗ゲートまでの移動空間は、物販も含めて店舗がほとんど存在しない「売上機会空白地帯」となっており、ここで短時間型のマッサージやネイルサービス、また散髪や靴磨きなど、日本であれば「駅ナカ」に標準的に揃っているサービスを展開すれば、旅客者の潜在需要に応えるかたちで新たな収益機会が生まれると考えている。

 

2点目はビジネス客に特化した小売店舗の展開である。羽田空港には伊勢丹がプロデュースするメンズとレディス向けのイセタン羽田ストアが、ビジネス衣料をはじめトラベルバッグやコスメまで販売しており業績は好調とのことだが、チャンギ国際空港においても百貨店やセレクトショップが「空港向け業態」として新たに展開をすれば相当ヒットするのではないかと考えている。というのも、そもそもシンガポールにはファッション感度が高いビジネスパーソンに支持される店舗の存在が限定的であることに加え、頻繁に出張をする多忙な空港利用者にとって日常の生活動線上に組み込まれたチャンギ国際空港は、限られた時間でショッピングができる貴重な場所となるためである。

web_profileプロフィール
山﨑 良太
(やまざき りょうた)
慶應義塾大学経済学部卒業。外資系コンサルティング会社のシンガポールオフィスに所属。週の大半はインドネシアやミャンマーなどの域内各国で小売、消費財、運輸分野を中心とする企業の新規市場参入、事業デューデリジェンス、PMI(M&A統合プロセス)、オペレーション改善のプロジェクトに従事。週末は家族との時間が最優先ながらスポーツで心身を鍛錬。

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