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会計・税務相談

2016年2月1日

Q.個人所得税の計算において、所得から控除されるものにはどのようなものがありますか。

個人所得税の所得控除について

A:いろいろな種類がありますが、中にはシンガポール国籍や永住権を持たない外国人にとっては関係ないものもあります。ここでは、外国人にも適用される所得控除を中心に説明します。なお、所得控除は税務上の居住者にのみ適用され、非居住者には適用されません。

 

◆勤労所得控除
雇用所得・年金所得・事業所得のいずれかがある場合に適用されます。高齢者の就労を促すために年齢によって控除額が異なり、54歳以下1,000Sドル、55~59歳6,000Sドル、60歳以上8,000Sドルとなっています。
◆配偶者の扶養控除
配偶者と生計を一つにして経済的に扶養する場合、2,000Sドルの配偶者控除が適用されます。課税対象年度の配偶者の所得が4,000Sドル以下(非課税所得やシンガポール国外の所得も含む)であることが要件とされています。配偶者との同居は必須要件ではなく、単身赴任者にも適用されます。
◆子供の扶養控除
扶養する子供がいる場合、子供1人につき4,000Sドルの扶養控除が適用されます。子供は、下記の要件を全て満たしている必要があります。
(a)未婚であること
(b)16歳未満、16歳以上の場合は全日制の教育機関に在籍していること
(c)課税対象年度の子供の所得が4,000Sドル以下(非課税所得やシンガポール国外の所得も含む)であること
両親共に所得がある場合には、子供の扶養控除を2人で分割して控除することも可能です。
◆職業に関連する自己啓発費用
職業に関連する下記のような講座・セミナー・会議の費用を個人で負担した場合、年間5,500Sドルを限度とする実費について所得から控除されます。
①学術・専門資格または技能資格の取得を目的として課税対象年度に受講した講座等の費用
②当時の職業に関連して課税対象年度に受講した講座等の費用
③課税対象年度の新しい職業に関連してその前年または前前年に修了した講座等の費用
◆寄付金控除
2015年にシンガポールの認可公益団体(IPC)またはシンガポール政府に行った寄付は、シンガポール建国50周年を記念して寄付金額の3倍(2018年までのその他の年については2.5倍)が控除されます。現金以外にもシンガポール上場株式の寄付や教育機関へのコンピューターの寄贈、美術館・博物館への美術品や造形作品の寄贈も控除の対象となります。
◆補助退職積立金(SRS)控除
SRSは、中央積立基金(CPF)に上乗せする退職積立金として導入された制度で、外国人も口座を開設して積み立てることができます。外国人の場合、2015年については2万9,750Sドル、2016年については3万5,700Sドルまで拠出することができ、拠出金は全額所得から控除されます。ただし、原則として口座開設時の法定退職年齢まで(シンガポールを永久に離れる場合には、口座開設から10年が経過するまで)引き出すことができず、また引き出しの際には引き出した金額の50%について課税される点に注意する必要があります。
◆外国人労働者税(FML)控除
既婚女性の就労を促すため、夫と同居する既婚女性または夫が税務上の非居住者である既婚女性が住み込みの外国人家政婦を雇用する場合、納付したFMLの2倍が妻の所得から控除されます。この控除は、夫と別居または離婚し、扶養控除の対象となる子供がいるシングルマザーにも同じように適用されます。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.296(2016年2月1日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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