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スペシャルインタビュー

2013年1月6日

花嫁を一番美しく輝かせるために、チャレンジと創造の47年

ブライダルファッションデザイナー桂由美さん

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去る2012年11月27日、シンガポールのマリーナベイサンズで開催されたFIDE Fashion Weekの「ジャパンクチュールイブニング2012」にて、堂々36点のドレスで観客を魅了した日本ブライダル界の第一人者、桂由美さん。世界的に知られるファッションデザイナーとしてだけでなく、日本、パリ、ニューヨーク、上海や北京でブライダル事業のフランチャイズ展開をするなど、早くからグローバルに活躍するビジネスパーソンでもある。2012年にキャリア47年を迎えた桂さんに話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

AsiaX

今回のシンガポールでのファッションショーのご感想をお聞かせ下さい。

私がこれまで創り上げてきたものを幅広くご紹介しました。当日、舞台裏の支度が大変でハラハラしていたんですが、皆さんに喜んで頂けて本当に良かったです。

AsiaX

数々の美しいドレスの中で、京友禅のドレスが、目を引きました。

シンガポールのファッション界が日本を代表するデザイナーとして招いてくださったので、日本ならではの作品をお見せしたかった。この「ユミ・友禅・ジャパン」シリーズは、きものを着る文化が衰退し、今や京都が危ないと言われる中で、いかに友禅や西陣織といった素晴らしい織物を、現在の価値観にあう形でファッションに取り入れていくか、それらを後世に残したい一心で取り組んだものです。ですから、ドレスの他にも、プレタポルテで一般の人が着れるようなフリーサイズのポンチョやカシュクール、ストールも制作しています。

AsiaX

ドレスだけでなく、新しい和装婚礼衣装もデザインされているのですね。

欧米では、婚礼の際にウェディングドレスを一着しか着ませんが、アジアには、ウェディングドレスだけでなく、それぞれの伝統衣装も着る習慣があります。しかし、日本人はドレス偏重になり、きものや打ち掛けを着る方がみるみる減っていきました。和装はヘアメイクが大変、カツラや着物が重い、帯が苦しい等が主な理由です。日本文化を伝承するために何とかせねばと思い、弊社で和装婚礼衣装を始めました。従来の重いきものではなく、オーガンジーなどのドレス素材を取り入れて軽くしたり、白塗りのお化粧やカツラもやめて、粋な和風の髪型を合わせたり。最初は皆さん驚かれましたけど、有名人の方々の結婚式を通して評判になり、最近は和装を選ぶ方も増えました。「伝承と革新」と申し上げるのですが、良いものでも伝承するだけでは廃れてしまいますから、現代のライフスタイルにあわせて変えていくべきなんです。

AsiaX

アジアでの手応えをどう感じていらっしゃいますか。

スクリーンショット 2015-06-30 12.47.44私のデザインの特徴は、品格、エレガンス、ロマン。もともとロマンチックなデザインなんです。ドレスに可愛いらしさを求めるアジアの傾向に私のデザインはあっていると思いますね。欧米人は、スレンダーでシンプルなものを好む。私のドレスもそれに合わせて手直しして、セクシーなラインを強調したりしています。ロマンという部分は彼らには甘ったるいのかもしれませんが、一方で中国などでは、そのロマンが特に好まれたりする。東南アジアもそれに近いですね。

AsiaX

あらゆる素材やスタイルを次々生み出し、ブライダルの文化をも創り上げた、その発想の源は何ですか。

新聞とかニュースを年中よく見ています。私は、何を見てもウェディングドレスのことしか考えていません(笑)。
例えば、可愛いロボットが開発されたという新聞記事を見た時、すぐにその開発元である筑波の産業技術総合研究所に連絡をして、そのロボットにウェディングドレスを着せてステージを歩かせられるか問い合わせました。先方は随分驚かれましたが、ドレスを持って筑波へ来てくださいと言ってくださった。実際にドレスを着せて動かしたり、ブーケを持てるよう手を開発したり、ステージから落ちないように改良して、世界で初のウェディングドレスを着たロボットになりました。
ショーの当日、そのロボットは、「今日は桂由美先生のウェディングドレスを着て、私はとてもハッピーです」と、微笑んでしゃべったんです。それから3年たった今、ロボットが踊れるようになったと聞いて、もう一度ランウェイに出したいなと思っている所です。
業界最先端の話でいうと、ノーベル化学賞を受賞したことで知られる緑色蛍光するオワンクラゲの遺伝子とカイコの遺伝子を掛け合わせることに成功したというニュースをきっかけに、筑波にある農林水産省の研究所を訪ねました。その絹糸でウェディングドレスを作ろうという話になったのです。桑の葉を食べているカイコや繭が、うす緑色に光っているのを目の当たりにした時は本当にショックでした。一着分4万個の繭を研究所で採取して、福島県の織物会社が布にして、ドレスに仕上げました。蛍光灯など白い光の下では白色で、薄暗い所ではうす緑色に光る幻想的なドレスになりました。ドレスの展示を皇后陛下もご覧になって、誉めてくださったんですよ。

AsiaX

逆境に当たった時、どのように乗り越えてきましたか。

私の仕事は皆さんの晴れ舞台をお手伝いすることで、お客様の悦びが自分の悦びになる。経済的に大変なことはありますけど、いい職業を選んだなと思っています。故ピエール・バルマン氏が、生前に一度私のお店に来た事がありました。「この世で一番美しいのは花嫁姿だ。私がオートクチュールでデザインするウェディングドレスは、年に何着も無い。毎日ウェディングドレスに囲まれて、それだけをデザインしているあなたは、すごくハッピーな人生を生きている」とおっしゃってくださった。その通りだと思うと同時に、この人が私の事を羨ましいと言うなんて、私はこの仕事を絶対に離れてはいけないと感じました。これが私の一生を決めた言葉になり、嫌な事や苦しい事があっても、そのひと言に励まされています。

AsiaX

ビジネスパーソンとしての成功の理由は何でしょう。

私は、ウェディングドレス一筋でしたからここまで来れたわけで、天才ではなく、努力型だと思います。「身の丈経営」とよく言うのですが、ビジネスを拡大する上で、大きな借金を抱えるなど危ない橋を渡る事は一切してこなかった。これだけ大きくなったと言われても、全国に73あるお店はフランチャイズで、それぞれとコラボレーションでやってきましたし、人生の負担になるようなこともなかったです。

AsiaX

桂さんからのアジアエックス読者へ励ましの言葉をお願いします。

武者小路実篤さんの「この道より我を生かす道無し、この道を行く」という言葉がありますが、これと思った一つの道を突き進んでください。私にはそうとしか言えないわね(笑)。

桂由美

株式会社ユミカツラインターナショナル代表取締役社長。東京生まれ。共立女子大学卒業後、パリに留学。1964年に日本初のブライダル総合専門店を赤坂にオープン。これまで世界20ヵ国以上の各国首都でブライダルファッションショーを行い、ブライダル文化の伝道師と呼ばれる。アジアブライダル協会連合会会長、全日本ブライダル協会会長、NPO法人地域活性化支援センター理事など。
株式会社ユミカツラインターナショナル

 

2013年01月06日
文= 桑島千春

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