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法律相談

2015年6月18日

Q.シンガポールに現地法人を設立して事業を営んできたのですが、この度、会社をたたんでシンガポールから撤退することになりました。どのような法的手続が必要でしょうか。

シンガポールから事業を撤退する際の法的手続

会社をたたむ、つまり消滅させる手続としては清算手続(Winding up)があります。この手続には、裁判所が関与する清算手続(Winding up by court)と、裁判所が関与しない自主的な清算手続(Voluntary winding up)があります。自主的な清算手続には、株主によるものと、債権者によるものがあります。こちらの会社の場合は、自主的に清算を行おうとしていますので、株主による自主的な清算手続の利用が考えられます。

 

Q:

自主的な清算手続を利用する場合の条件などはあるのでしょうか。

 

A:

株主による自主的な清算手続の場合、当該会社の取締役会は清算手続開始から12ヵ月以内に会社の全ての債務の弁済が可能である旨の宣言書(Declaration of solvency)を登記しなければなりません。仮に、後に指名される清算人が、会社の債務を弁済するために十分な資産がないと判断した場合には、債権者の関与が広く認められる「債権者による自主的な清算手続」として手続が進むことになります。

 

Q:

なるほど。まずは会社の資産と債務の状況を確認しなければなりませんね。会社は債務超過に陥っておらず債務の弁済は可能だと思いますので、株主による自主的な清算手続を利用できると思います。具体的にはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。

 

A:

一般的には、まず、取締役会において清算手続の開始から12ヵ月以内に債権者に対して全ての債務の弁済が可能である旨の宣言書を作成して、株主総会招集通知発送前に会計企業規制庁(ACRA)に登記する必要があります。そして、株主総会において会社を自主的に清算する旨の特別決議を行い、さらに清算人を指名します。

 

Q:

株主総会決議を行った後はどうなるのでしょうか。事業は継続するのでしょうか。

 

A:

株主総会決議の登記や清算人の登記等を行った後、清算人は速やかに会社財産の換価を行い、全ての債権者に対して弁済します。もし余剰の財産があればそれらは株主に配当されることになります。事業については、清算人が会社の清算手続のために必要であると認めた場合を除いては、清算手続が開始した時点で停止することになります。仮に、清算人が一部の事業の継続を認めた場合、全ての請求書、発注書、ビジネスレター等には会社名の後に清算中である旨を記載しなければなりません。

 

Q:

会社の取締役等には何か役割があるのでしょうか。

 

A:

会社の取締役や一部の役員は、清算人に協力して補佐する義務を負っています。

 

Q:

清算手続をスムーズに行うために気をつける点はありますか。

 

A:

清算手続の中心は、清算人が会社の財産を換価して債務を弁済することです。そこで、正式に清算手続を開始する前に事業を譲渡したり、財産を処分したり、また債務についても整理して弁済を進めておくことで清算手続はスムーズに進むでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.279(2015年05月04日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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