2012年7月2日
Q.外国人労働者の雇用に関する運用が厳しくなると聞きました。具体的な内容について教えてください。
外国人労働者の雇用割当限度率の引き下げおよび雇用税の引き上げについて
今年に入って外国人の就業許可証の取得基準が厳格化される等、外国人の労働環境が厳しくなってきているシンガポールですが、今年の1月末に発表された2012年度予算案の中で、政府は外国人労働者への依存を抑制するために更に規制を厳格化することを公表しました。具体的には、Sパスまたはワークパーミットを有する外国人労働者の(1)雇用割当限度率の引き下げと(2)雇用税の引き上げが決定されました。
- 雇用割当限度率の引き下げ
雇用割当限度率(DRC)とは、企業がSパスまたはワークパーミットを有する外国人労働者を雇用できる限度率のことを言います。6月までは、製造業の場合には全従業員(エンプロイメントパスを保有している外国人を除く)のうち65%まで、サービス業の場合には全従業員のうち50%までSパスまたはワークパーミットを保有している外国人労働者を雇用できることになっており、更にSパス保有者は全従業員の25%まで雇用できることになっていました。
しかし、新たな規制では、これらの割合が以下のように変更されることになります。
2012年6月30日まで | 2012年7月1日以降 |
||
---|---|---|---|
製造業 | 65% | → | 60% |
サービス業 | 50% | → | 45% |
うちSパス保有者 | 25% | → | 20% |
この変更により、例えば全従業員が20名の企業の外国人労働者の雇用人数の限度は次のように変更されることになります。
2012年6月30日まで | 2012年7月1日以降 |
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---|---|---|---|
製造業 | シンガポール人従業員 7名 外国人労働者(Sパス) 5名 外国人労働者(ワークパーミット) 8名 | → → → | 8名 4名 8名 |
サービス業 | シンガポール人従業員 10名 外国人労働者(Sパス) 5名 外国人労働者(ワークパーミット) 5名 | → → → | 11名 4名 5名 |
この新たな規制は2012年7月1日から適用されることになっていますが、既に新たな規制を超えて外国人労働者を雇用している企業の場合には2014年6月までにこの規制に従えばよいということになっています。
2. 雇用税の引き上げ
もう1つの変更点は雇用税の引き上げです。雇用税とは外国人労働者を雇用する場合に企業が支払う税金のことを言います。以前から2012年7月から雇用税が引き上げられること(例えば、2012年6月末まではSパスを有する外国人労働者を1名雇用するごとに160~250ドルを支払わなければなりませんでしたが、この金額が2012年7月からは200~320ドルになりました)は決まっていましたが、今回の発表の中で、建設業において、プロジェクトの種類と規模に応じた外国人採用枠であるMYEの対象外の非熟練労働者の雇用には2013年1月1日から650ドル、同年7月1日からは750ドルの雇用税が課されることになりました。
以上のように、シンガポールの外国人労働者に対する政策は現在厳格化に向かっており、かつ、頻繁に変更されていますので、常に最新の情報を取得するように心がけてください。
取材協力=Kelvin Chia Partnership 関川 裕
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.215(2012年07月02日発行)」に掲載されたものです。
本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。