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法律相談

2012年3月5日

Q.シンガポールにて新しく整備される個人情報保護制度について教えて下さい。

シンガポールにおける個人情報保護制度について(1)

ある弁護士と日系中小企業のシンガポール子会社取締役であるAさんとの対話という形式でご説明いたします。

 

Aさん

先生、シンガポールでも個人情報保護法が制定されると耳にしたのですが、これはどういうことでしょうか。

 

弁護士

ええ、確かに、シンガポール情報通信芸術省は、昨年(2011年)9月と10月に2種類のコンサルティングペーパーを公表し、個人情報(Personal Data)の保護に関する統一的な法制度を整備することについて、広く大衆から意見を求めました。現在までに集められた意見からすると個人情報保護法(Data Protection Law)の制定自体については積極的な意見が多いようです。

 

Aさん

うーん、個人情報保護法が制定される可能性が高いということですね。今更かもしれませんが、現在、シンガポールにおける個人情報の保護に関する法制度はどういったものなのでしょうか?

 

弁護士

意外かもしれませんが、シンガポールでは、現在、統一的な個人情報保護法はなく、個人情報の保護に関する規制としては官庁や銀行など特定の業種を対象とした法律しかありません。

 

Aさん

これだけ発展したシンガポールできちんとした個人情報保護法がないことは驚きです。今回、なぜシンガポールで個人情報保護法が整備されることになったのでしょうか?

 

弁護士

諸外国の個人情報保護法の中には、取引先が外国企業の場合、当該外国の個人情報保護の内容やレベルの確認を要求し、当該外国企業に対して自国と同等の個人情報の保護に関する義務を要求するものもあります。そのため、シンガポールにおいては、個人情報保護法制が未整備のままでは国際取引における信用にも影響が出る懸念が現実化してきました。したがって、国際ビジネスハブを志向するシンガポールも経済活動のグローバル化を促進するため、個人情報保護法制の整備が急務となったのでしょうね。

 

Aさん

では、個人情報保護法で、どのようなことが規制されるのでしょうか?

 

弁護士

残念ながら、現在、具体的な法律は制定されていませんので、明確な回答はできません。あくまで、現在公表されているコンサルティングペーパーに記載されていることを前提にお答えいたしますので、その点についてはご留意くださいね。

 

個人情報保護法制下で規制対象とされるのは、「個人を識別する情報および個人を識別することができる情報」とされています。これは、法人などではなく、自然人である個人を識別することができる情報を意味しており、例えば、パスポートナンバーや顔写真などのほか、個人が保有する携帯電話番号も含まれ得るものとされています。ただし、例えば、100年以上前の古い個人情報や事業上の連絡先の取得・利用・開示に関する場合など、個人に関する情報でも規制対象とされない一般的な適用除外も定められる予定です。

 

Aさん

弊社も個人顧客の携帯電話番号を管理していますので、個人情報保護法制で規制の対象となってしまうのですね。

 

弁護士

ええ、規制対象となる主体には、個人、会社その他の組織全てを含むとされます。ただし、「私事や家事に関する情報のみを取り扱う個人」や「公的機関」は含まないとされていますので、例えば、Aさんが個人的にクリスマスカードや年賀状作成のために親戚や友人の個人情報を保有していても、Aさん個人は、個人情報保護法では規制されないと考えられます。

 

※以下次回(アジアエックスVol.211、2012年5月7日発行)に続く

取材協力=Kelvin Chia Partnership 伴 真範

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.207(2012年03月05日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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