Q.就業許可証の更新およびSパスの取得について教えてください。

前回に引き続き、日本の中小企業のシンガポール子会社の取締役であるAさんと弁護士との対話という形式でご説明いたします。

 

Aさん

Q1の基準が変更されるとのことですが、P2の基準はどうでしょうか？実は私はP2のEPを持っていて、そろそろ更新しなければならないのですが。

 

弁護士

今年からP2の最低基準額は現在の$4,000からS$4,500に引き上げられます。

 

Aさん

えっ？実は私の月給額はS$4,000なのですが、今年から金額を上げなければならないということでしょうか？

 

弁護士

現在のEPの有効期限がいつまでかによります。2012年1月1日より前に有効期限が切れる場合には2011年7月以前の基準で2年を上限として1回更新することができましたが、2012年1月1日から6月30日までに有効期限が切れる場合には現在の基準で1年を上限として1回更新することができます。

 

Aさん

そうなんですか。私のEPは今年の3月末までですので、給料は現在のままでも1年を上限として1回更新ができてしまうわけですね、残念です……。

 

ところで、エンジニアとして日本人（C）を1人現地採用しようとしているのですが、彼は大学を卒業していないようで、給料もS$2,800以下になりそうです。この場合CのためにはSパスを申請することになりますでしょうか？

 

弁護士

そうですね。Sパスの要件は①月給額がS$2,000以上、②大学または短大もしくは資格ある技術者または専門家になるための（1年以上の教養課程を含む）専門学校を卒業していること、③専門職または技術職に就くこと、④当該職種について数年の経験があることです。

 

Aさん

面接の際にCから聞いた話によれば、要件を満たしそうです。

 

弁護士

Cさんのパスポート、卒業証明書、履歴書などの書類を確認していますか？

 

Aさん

いいえ、まだ電話面接を行っただけです。

 

弁護士

Sパスの申請までには必ず確認してください。就業許可証の申請に関しては雇用者が責任を負っていますので、これらの書類を確認せずに申請を行い、もし情報が間違っていた場合には雇用者にも非があるとみなされることがあります。

 

Aさん

分かりました。ちなみにどのくらいの罰則になりますか？

 

弁護士

S$15,000以上の罰金および／または12ヵ月以上の懲役になります。参考までに、就業許可証なしにシンガポールで働いた人にはS$5,000以上の罰金または12ヵ月以上の懲役が科される可能性があります。

 

Aさん

なかなか厳しいですね。他にSパスに関して注意することはありますか？

 

弁護士

従業員にSパスを取得させる場合には、会社側にもいくつかの義務が課される点に注意が必要です。まず、ローカル社員に対するSパス保有者の割合を25%以下にしなければなりません。また、Sパス保有者1人につき月S$120～180のForeign Worker Levyという負担金を支払わなければなりません。その他、雇用者はSパス保有者に保障額S$15,000以上の医療保険を掛けなければなりません。

 

前回ご紹介したEPの取得基準の変更について、来年以降の新基準に基づくセルフアセスメントツールがMOMウェブサイトで公開されましたのでご確認下さい。