シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールにおける Workplace Safety Regu...

法律相談

2008年5月5日

Q.シンガポールにおける Workplace Safety Regulation(職場の安全と衛生管理の規則)について、雇用主に課される義務と、対策の取り方を教えてください。

職場の安全と衛生管理の規則(パート2)

前回Workplace Safety Regulation(職場の安全と衛生管理の規則)について、「職場での適応範囲」と「職場における責任義務」を説明しました。今回は「責任義務とその対策」について説明します。

 

職場占有者の義務

Workplace Safety and Health Actの11条は「職場占有者は、合理的に実施可能な限りにおいて、(a)職場、(b)職場の全ての出入口、及び(c)職場に保管されているいかなる機械、機材、機械装置、物品、物質が、業務に携わっているか否か、或いは占有者(雇用主)の従業員の有無にかかわらず、建物内の全ての人の健康に危害がなく安全であることを確保する義務がある」と規定しています。例えば、宅地開発業者が工場許可書を取得し、その業務の全てをさまざまな仕事を下請けしている業者に委託した場合、その業者は職場の占有者とはみなされません。宅地開発業者が職場の占有者であり、下請け業者は「プリンシパルコントラクター」或いは「自営業者」に当たります。

 

雇用主の義務

雇用主は従業員及びその他の人に対し義務を負うとされています。しかし同法12条は各々の責任義務を一般的な枠組みで規定している為、直ちに個々の具体策の指標にはなりません。従って、同法を遵守する為には個々の職場において適切な対策を講じる必要があります。

 

対策方法

対策方法の一つとして、職場の安全・衛生管理の為の体系的手順を示したthe Safety and Health Management System (SHMS)があります。SHMSは管理責任、指示、準備が何であるかを明確に説いたもので、目標設定、計画、その評価を規定しています。SHMSは実施方法を3ステップに分けています。

 

第1ステップは危機管理(管理職者がリスクを査定し、管理対策を決め、そのリスク削減のための適切な対策を施行するプロセス)です。

 

第2ステップは対策の実施です。造船所、建設現場(契約金額が1千万シンガポールドルもしくはそれ以上のもの)及び、(1)半導体ウェーハー製造工場、(2)石油、石油製品、石油化学品、石油化学製品の工程或いは製造工場、(3)組み立て金属部品、機械もしくは機材の製造工場(従業員100人以上)においてはthe Occupation Safety and Health Management System (OSHMS)(職業安全・衛生管理システム)の実施が必須義務となっています。

 

第3ステップは安全・衛生管理の継続的な向上の為の、OSHMSの定期的な再検討です。OSHMS の下では、(1)主な建設現場(契約金額が3千万シンガポールドルかそれ以上)は6ヵ月ごと、(2)従業員が100人以上の組み立て金属部品、機械、或いは機材の製造工場は1年ごと、(3)半導体ウェーハー及び石油、石油製品、石油化学、及び石油化学製品の工程・製造工場は2年ごとに、認可を受けた職場の安全・衛生管理監査官による検査を受けることが義務付けられています。

 

事故報告及び罰則

職場内の事故、危険な事故、或いは職業病の発生があった場合、事故報告書を作成し、コミッショナーに報告する義務があります。報告を怠った場合、初犯は、最高5千シンガポールドルの罰金、再犯の場合は最高1万シンガポールドルの罰金又は最高6ヵ月の懲役が科せられます。虚偽の申告もしくは報告をした場合には、最高5千シンガポールドルの罰金、及び・或いは、最高6ヵ月の懲役が科せられます。また、同法及び関連規則の遵守を怠り事故が発生した場合、職場安全・衛生管理コミッショナーによって『Remedial order』(危険な状態を改善或いは同法で課せられている義務の遵守の為に発せられる行政命令)もしくは『Stop-work order』(無期限もしくは一定期間の即時業務停止の行政命令)が発せられることがあります。これらの行政命令に従わなかった場合には5万シンガポールドルを超えない範囲の罰金か、12ヵ月未満の懲役もしくはその両方が科せられます。同法違反は刑事罰が科せられますが、同法の下では民事罰は科せられません。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.121(2008年05月05日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールにおける Workplace Safety Regu...