シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP元社員が競合企業で働いています。客先を奪うなど会社に不利益を与え...

法律相談

2004年12月27日

Q.元社員が競合企業で働いています。客先を奪うなど会社に不利益を与える恐れがあります。法律上、元社員が競合企業で働くことをやめさせることは可能ですか?

元社員の競合企業での就労

シンガポールでは、雇用関係においてまず個別の契約が非常に重要な意味を持ちます。元社員の競合企業での就労をやめさせるための法的措置が取れるかどうかは、雇用契約にそのような規定があったかどうかにかかっています。規定がまったくない場合は、その従業員が退職後に競合企業で就労したとしてもこれを防ぐことはできません。

 

雇用契約では、一定期間競合企業等で働くことを禁止することが、競業避止義務として規定されることがあります。このような規制条項一般のことをRestraint of Trade あるいはRestrictive Covenantといいます。もし、従業員が退職後に競合企業で働かないことが契約上同意されていた場合は、その従業員は契約内容に従うという法的な義務を負っています。したがって、退職後にその義務に違反して競合企業で就労すれば、会社は契約違反として元従業員の法的責任を追及できる場合もあります。

 

ただ、契約でこのような規制条項を設けた場合でも、すべての場合に裁判上の強制執行を求めることができるわけではありません。シンガポールでは、このような規制を認めることがそもそも「商業活動において自由競争を促すという公益」に反するとされ、規制は極力法律上強制すべきでないのが原則論であるとされているためです。

 

例外として認められる場合はありますが、具体的には、その規制が地理的・時間的に合理的なものに留まること、規制によって雇用主側の守ろうとしている利益がTrade Secrets(企業秘密)等の重要な法的利益であること、規制の内容・態様全体を考慮して公益に反するものといえないこと、以上のすべてを満たすことが必要です。そしてこの証明責任は会社側にあります。裁判所が審理の上で必要かつ合理的な規制であると認めた場合には、その元従業員に対して、合意内容を履行するよう命令を出します。例えば、一定の期間は特定の職務に就いたり、特定の同業者等の下で働くことを禁じる差止命令等です(injunction)。また、会社に具体的な損害がある場合には、会社は損害賠償請求を行うことも可能です。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.026(2004年12月27日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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