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会計・税務相談

2014年7月7日

Q.家族帯同でシンガポールに赴任してきました。妻が時間に余裕があるのでパートタイムで働きたいと言っていますが、どのようにすれば働くことができるのでしょうか。また、何か気をつけることがあれば教えてください。

駐在員の配偶者の就労

シンガポールで就労する外国人のうち、エンプロイメントパス(EP)またはSパスを保有し、かつ月額固定給がS$4,000以上であれば、ディペンデントパス(DP)を申請して配偶者および満21歳未満の未婚の子供を帯同することができます。家族のディペンデントパスは、エンプロイメントパスまたはSパスを保有する外国人従業員の雇用主が申請します。

DP保有者は、以下の要件を満たしていれば、シンガポールで就労することができます。

  1. エンプロイメントパスまたはSパス保有者の扶養家族であること
  2. シンガポールでの就労先が確定していること
  3. ディペンデントパスの有効期間が3ヵ月以上あること

DP保有者が就労を開始するには、Letter of Consentと称する就労許可書を人材省(MOM)に発行してもらわなければなりません。これはDP保有者を雇用する事業主がMOMに申請するため、DP保有者が働き始めるにあたり自分で行わなければならない手続きは特にありません。また、Letter of Consentの発行については、エンプロイメントパスのような学歴、職歴、給与に関する要件がなく、スチューデントパスのような就労時間に関する制限もありません。ただし、医師、看護師、薬剤師、弁護士など特定の職種に関しては、監督省庁への届出や許可が必要になる場合があります。

また、EP保有者の雇用先では、帯同家族の就労について就業規則に定められていたり、手当の金額に変更が生じる場合がありますので、まず、勤め先の人事部に家族の意向を伝えて相談されるとよいでしょう。

働いて収入を得ると、所得申告が必要になります。毎年3月1日から4月15日までの期間に、前暦年の所得について自分で所得申告を行います。雇用主は、3月1日までに前暦年の雇用所得についてForm IR8Aという証明書を発行してくれます。現在、従業員12名以上の事業所は、Form IR8Aをオンラインで内国歳入庁(IRAS)に提出することが義務づけられているため、従業員の所得申告書には予め雇用所得の金額が記載されています。一方、従業員12名未満の事業所の場合には、印刷されたForm IR8Aが従業員に配布されますので、従業員はそれに基づき自分で申告書に所得金額を記載することになります。

個人の所得申告は、IRASにForm B1という申告書を提出して行います。IRASは、個人の所得申告についても原則としてオンラインで行うことを奨励しています。IRASのホームページにあるMy Tax Portalにログインして申告しますが、ログインするにはSingPassと称するパスワードを予め入手しておかなければなりません。

納税者が税務上のシンガポール居住者である場合には居住者用累進税率が適用され、S$2万までの所得は税率0%、すなわち免税とされています。非居住者である場合には、雇用所得について15%の税率が適用されます。

一方、EP保有者に関しては、通常、扶養家族の配偶者および子供について扶養控除が適用されますが、被扶養者に年間S$4,000を超える所得がある場合には、扶養控除は適用されなくなります。また、子供の扶養控除は、1人の子供につき何れか一方の親のみに適用されますので、所得の多い方の親が適用を受けた方がよいでしょう。

DP保有者が帰任や転職により退職することになった場合、雇用主は最終月の給与の支払いを留保して退職日までの雇用所得をIRASに申告し、所得税の納付を終えた上で残額を本人に支給することが義務づけられています。この場合、個人で所得申告する必要はありませんが、所得税の納付が完了するまで給与を受け取ることができないため、少なくとも退職日の1ヵ月前には雇用主に通知し、IRASへの所得申告を行ってもらうようにしましょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.260(2014年07月07日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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