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会計・税務相談

2008年6月16日

Q.タックスヘイブン対策税制について教えてください。

タックスヘイブン対策税制

タックスヘイブン対策税制は、日本の居住者が所得税が課せられない国や税率の低い国に会社を設立し、その会社に利益を移転したり留保することにより、日本での租税負担を回避しようとするのを防ぐための制度です。

 

この制度では、株式の50%超が日本の居住者(個人及び法人)により直接及び間接に保有され、法人税の実効税率が25%以下の国に設立された会社を「特定外国子会社等」と称します。これら特定外国子会社等の株式の5%以上を直接及び間接に保有する日本の居住者(個人及び法人)は、当該特定外国子会社等の留保所得のうち、持分割合に応じた金額について、日本において合算課税されます。

 

近年、法人税の税率は、世界的に引き下げの傾向にあります。シンガポールは2002賦課年度に法人税の基本税率を24.5%に引き下げましたが、中国は2008年1月1日より25%、マレーシアも2009賦課年度より25%と、タックスヘイブン対策税制において軽課税国とされる国は増える一方です。

 

タックスヘイブン税制の本来の主旨は、意図的な租税回避を防止するためのものですので、特定外国子会社等が実体を有し、経済的合理性のためにその国で事業を行っている場合には、適用を除外されます。適用除外のための要件には以下の4つがあり、特定外国子会社等がこれら4つの要件の全てを満たした場合に合算課税が免除されます。

 

  1. 事業基準 主たる事業が株式又は債権の保有、工業所有権等の知的財産権の提供、船舶又は航空機の貸付けでないこと。これらの事業は、敢えて日本の国外に会社を設立しなくても事業を行うことが可能であると考えられているからです。
  2. 実体基準 その国に主たる事業を行うのに必要な事務所、店舗、工場等を有すること。単にペーパーカンパニーを設立するだけであれば、海外に進出する必要性が認められません。
  3. 管理支配基準 その国において事業の管理、支配及び自ら運営を行っていること。事務所を開設し、従業員を雇用していても、実際の重要な意思決定は日本の親会社で行なわれているような場合には、親会社から独立した会社として営業していると見なされません。
  4. 非関連者基準(主たる事業が卸売、銀行、信託、金融商品取引、保険、証券、水運、航空運送である場合) その事業を主として関連者以外の者との間で行っていること。例えば、卸売業の場合には、非関連者との間の取引金額が販売金額又は仕入金額の50%以上を占めていなければなりません。
  5. 所在地国基準(主たる事業が卸売、銀行、信託、金融商品取引、保険、証券、水運、航空運送以外である場合) その事業を主としてその国で行っていること。不動産業やリース業のような場合には、その国で供用される物件を主として扱っている必要があります。

 

ここ数年、中国の工場に委託加工する香港の日系企業子会社について、(4)の非関連者基準・所在地国基準に基づき、会社側は当該香港子会社の業種を卸売業として適用除外を申請していたところ、税務当局は香港子会社が中国の工場の管理に深く関与していることにより製造業であると判断し、主たる事業である製造を所在地国の香港で行っていないことにより所在地国基準を満たさないとして、更正処分を行った事例が報告されています。グローバル化の中で、取引の仕組みにもいろいろな形態が生まれてきます。関係各国の税制を踏まえた総合的な見地からの税務プランニングがますます重要になるでしょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.124(2008年06月16日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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