シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP当社は、東南アジアの営業拠点としてシンガポールに子会社を設立し、...

会計・税務相談

2008年4月21日

Q.当社は、東南アジアの営業拠点としてシンガポールに子会社を設立し、長年営業活動を行ってきましたが、香港にアジア地域事業本部を新しく設立することになり、それに伴いシンガポール子会社の閉鎖を検討しています。会社を閉鎖するにはどのような手続きを取ればよいでしょうか。

シンガポールで会社を閉鎖する場合の手続き

シンガポールで設立された会社を解散する場合、以下の3つの方法により清算することができます。

 

  1. 株主による任意清算
  2. 債権者による任意清算
  3. 裁判所命令による強制清算

 

このうち、(2)は、会社に債務の支払能力がない場合に債権者会議を招集して清算手続きを開始する方法です。又、(3)は、会社法に定められた所定の場合に、裁判所の命令により強制的に清算手続きを行う方法です。

 

通常、企業の組織再編等による解散は、最も円満な手続きである(1)の「株主による任意清算」を選択するのが一般的です。この手続きを行うには、全ての債権者に対する債務を完済することが要件とされています。

 

株主による任意清算を行う場合、まず、取締役は、取締役会を開催して解散のための臨時株主総会の招集を決議します。又、同じ取締役会において、取締役は、直近の決算書に基づき、取締役の意見として清算開始日から12ヵ月以内に会社の債務の完済が可能であることを宣誓する「支払能力宣誓書」に署名します。支払能力宣誓書は、株主がそれを閲覧できるようにするために、臨時株主総会の招集通知が株主に発送される以前に会計法人監督庁(ACRA)に登記されなければなりません。会社が債務超過に陥っているような場合には、親会社による債権放棄や増資等により、事前に債務超過の状態を解消しておく必要があります。

 

上記により招集される臨時株主総会は、取締役による支払能力の宣誓から5週間以内に開催されなければなりません。株主総会では、解散の特別決議及び清算人の選任決議が為されます。株主総会における清算人の選任後、取締役は全ての権限を失い、その権限は清算人に委譲されます。臨時株主総会開催日の翌日から清算が開始され、清算人は、臨時株主総会開催日から7日以内に株主総会議事録をACRAに登記し、10日以内にシンガポールで発行される1紙以上の新聞に解散決議を公告します。

 

清算開始後、清算人は会社の資産の換価及び債務の整理を進め、清算開始日から6ヵ月の期間が過ぎる毎に当該期間における入出金及び資産・負債の残高を報告する計算書を作成し、ACRAに登記します。通常、株主による任意清算において最も時間を要するのは内国歳入庁(IRAS)による税金精算手続きであると言われており、これに関して会社はIRASから全ての税金債務の納付が完了したことを証明する文書を入手する必要があります。

 

清算手続きの全てが終了すると、清算人は、清算手続きがどのように行われ資産がどのように処分されたかを報告する最終計算書を作成し、結了集会を招集します。結了集会の招集通知は、シンガポールで発行される英語、マレー語、中国語、タミール語の新聞各1紙以上、合計4紙以上に公告しなければなりません。又、招集通知期間は1ヵ月以上とされています。

 

結了集会の開催日から7日以内に、清算人は、結了集会開催申告書をACRAに登記します。会社の登記抹消は、この申告書がACRAに登記された日から3ヵ月後とされており、登記抹消日の翌日以後、会社は、保管が義務づけられていた帳簿類を破棄することができます。

 

清算が開始されてから結了するまでの期間は会社によりますが、一般的には最低約1年と言われています。清算期間が1年を超える場合、清算人は年次株主総会を招集して、株主に清算経過を報告します。清算の実務上の手続きは会計事務所や法律事務所が請け負いますので、詳細についてはこれらの専門家に相談されるとよいでしょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.120(2008年04月21日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP当社は、東南アジアの営業拠点としてシンガポールに子会社を設立し、...