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会計・税務相談

2005年1月17日

Q.当社は、創業以来赤字が続いています。税務上の欠損金等はいつまで繰り越せますか。

欠損金等の繰り越し

日本では、法人の欠損金は、過去7年以内に発生したものに限り、当該事業年度の所得と相殺できますが、シンガポールでは当該法人の株主が実質的に同一であるという要件(株主要件)を満たす限り、無期限に繰り越して将来の所得と相殺することができます。

 

また、特定の寄附金に認められている寄附金控除についても、2003賦課年度より繰越欠損金と同様の株主要件を満たすことで、寄附金が発生した賦課年度から5年間に限り、繰越控除が認められることとなりました。

 

株主が実質的に同一かどうかは、欠損金や特定寄附金が発生した賦課年度の前年の12月31日と、これらが所得と相殺される賦課年度の1月1日における株主構成を比較します。株主持分の50%以上が同一であるかどうかによって判定されますが、ここでいう株主は、直接保有者ではなく「究極の株主(個人)」を指します。

 

シンガポール税務当局は、通常、株主が実質的な変動がないことの証拠として、外部監査人による証明書の提出を要求しますが、当該法人またはその親会社が上場会社である等、外部監査人による証明が難しい場合には、他の方法による証明が認められる場合もあります。さらに、株主に実質的な変動があった場合でも、それが租税回避を目的としたものではなく、合理的な理由(例えば株式公開等)によるものであると税務当局が判断すれば、同一事業からの所得に限り、株主変動後も繰越欠損金との相殺が認められる場合もあります。

 

欠損金及び特定寄附金だけでなく、税務上の減価償却であるキャピタルアローワンスについても、所得から控除しきれない場合には、株主要件を満たす限り、無期限に繰り越して将来の所得と相殺することができます。ただし、キャピタルアローワンスの繰越控除における株主要件は、繰越欠損金の場合と異なり、キャピタルアローワンスが発生した賦課年度の12月31日と、当該未控除キャピタルアローワンスが所得と相殺される賦課年度の1月1日における株主構成を比較して判定されます。加えて、キャピタルアローワンスの繰越控除については、株主要件の他、キャピタルアローワンスが発生した事業を継続していることが要件とされています。

 

なお、2003賦課年度より、グループ控除制度という新しい制度が導入されました。これは、法人の所得から控除しきれないキャピタルアローワンス、欠損金及び特定寄附金について、当該賦課年度に発生したものに限り、グループ内の他の法人の課税所得と相殺できるという制度です。グループ控除制度の適用については詳細な規定が定められていますので、詳しくは会計事務所等にご相談ください。

取材協力=Price Waterhouse Coopers

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.028(2005年01月17日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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