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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2010年1月18日

目標だけでは部下は動かない

新しい年が明けて、このコラムも3回目になりました。おかげさまで好評で、今年も1年間頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
今回は今年最初と言うことで「目標」をテーマにお届けします。

 
あなたの会社には、今月商品を何台売る、今月商品を何台作る、今月の契約件数は何件、不良率を何%以下にする、などの非常に明確な目標が掲げられ、そのためのテクニカルな話し合いも頻繁に行われていることでしょう。会社によっては、言葉だけではなく、壁に張り出すなどして、目標達成に向けて部下を叱咤激励している場合もあると思います。しかし、「笛吹けど踊らず」と言った会社も多いのではないでしょうか。

 
そう言った会社に良くありがちなのが、誤った目標思考に陥っているということです。
あなたは部下から、「目標って何ですか?」「目的って何ですか?」と聞かれたら、きちんと違いを説明できるでしょうか。

 
例えば、3日以内にある島へ到着しなければならないとしましょう。押し寄せる荒波を何とかしのぎ、懸命にオールをこいで、もう少しで島へたどり着くと言うところで、突然の嵐に見舞われ、スタート地点まで押し戻されてしまいました。さて、あなたはどう思いますか?ほとんどの人が、「もう、こんなことやってられない」「面倒くさいから、もうやめてしまえ」と思うのではありませんか?そう思うのも当然です。なぜなら、この場合は、あるものが欠落をしているのです。それは、「目的」です。目標はあっても、目的がないのです。

 

私なりに目的と目標の違いを説明するのであれば、「目標とは、いつまでに、何を、どうするのか」という手法のことであり、「目的とは、何のために、なぜするのか」という行動の理由のことです。

 

 

では、先程のケースに、目的付けをしてみましょう。例えば、「残虐な男に、妻や子供が捕らえられていて、3日以内に島へたどり着かないと生命の危険にさらされる」という状況があったとします。「愛する妻や子供を救う」という目的が生まれ、「3日以内に島へたどり着く」という目標も明確になります。そうなると、たとえ嵐で押し戻されたとしても、最後まであきらめずに行動するのではないでしょうか。あなたは「もしかしたら間に合わないかも知れない」と不安にかられながらも、一生懸命にもう一度、ボートをこぎ出すはずです。

 
人は「目的」と「目標」が揃ったとき、初めて自主的に、かつ、たとえ困難な状況でも粘り強く行動するようになります。
人は目標では動機付けされません。人は目的にのみ動機付けされるのです。

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.160(2010年01月18日発行)」に掲載されたものです。

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