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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2010年3月1日

楽しむための人生ではなく、楽しみながらの人生

昨年、私の友人の娘さんが、マレーシアでボランティア活動をした帰り道にシンガポールへ遊びに来て、私の自宅に2日間泊まっていったことがありました。私には娘がいないので、娘を持った気分になり、楽しい一時を過ごすことができました。

 
私の友人は、若くして子供を産んだので、娘さんは21歳の一人立ちをした立派な大学生。その彼女と過ごす中で、ものすごく印象に残った言葉があります。それは、『お金があれば、何でも手に入って幸せだけど、本当の幸せって何なんだろ?私は、今回ボランティア活動をしている時、日差しの強い中、水が少なかったから、生ぬるい水をチビチビ飲んでいた。その活動終了後、近くのお店まで15分くらいかかったけど、みんなで話しながら買いに行ったコーラの方が、お金があって、目の前にあるコンビニで直ぐ手に入ったコーラを飲んだときよりも、遙かに楽しくて幸せで、私にとって、ものすごく価値があった。』という言葉でした。彼女はこの体験からきっと多くのことを学んだのでしょう。

 
私の著書『雨がふってもよろこぼう!』(フォレスト出版)の中で、【結果は得るものであって、学ぶことはない。学びはプロセスからのみ得られる】 と書きましたが、この場合、『コーラを飲む』という得られる結果は変わりありませんが、コーラを飲むまでのプロセスで、お金があって目の前にあるコンビニで買うコーラよりも、ボランティア活動を通して苦労を分かち合った後、手に入れたコーラの方が遙かに価値があったということですよね。

 
私はアウトプットされた結果のみを評価する【間違った結果主義】を導入している企業が気になってなりません。この例を見れば分かるように、私は、本当に部下・従業員の成長を願うのであれば、その結果を得るために、どういったプロセスを踏んだかをもっと大切にすべきだと考えています。あまりにも結果だ!結果だ!結果だ!と結果をあげれば何をやってもOKのようなことをしてしまった結果が、今、世界同時不況を起こした金融危機の原因の一つではないでしょうか。

 
人は元来「何のために生まれてきたのか?」を考えれば分かるように、楽しむことを忘れてはなりません。しかし、あまりにも行き過ぎた結果主義になりすぎると、いつのまにか『楽しむため』に生きていく人生になり、『楽しみながら』生きる人生を忘れてしまうような気がしてなりません。

 
どんな世界であろうがプロとして働いている我々は、求められるものが結果なのは十分に分かっているはずです。しかし、大切なのは、その結果を出すためのプロセスなのです。
私はまだまだ若輩者ですが、それなりの経験の中から、今だからこそ結果を出すためにプロセスこそが大切だと言えるのです。だから、私は強烈なプロセス思考なのです。みなさんの会社では間違った、行き過ぎた結果主義で人を動かしていませんか?

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.162(2010年03月01日発行)」に掲載されたものです。

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