シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP「部下育成」は業績を上げることだけが目的ではない

嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2012年10月1日

「部下育成」は業績を上げることだけが目的ではない

最近私はいろいろな会社にお伺いをしていて、非常に寂しいと感じることがあります。それは、部下を育てるという行為を、業績を上げる(自分の責任を果たす)ことの役割と捉えている方がいらっしゃるということです。

 

スペースも限られている関係上詳細なことはここでお話しをできませんので、私の『上司学』について書いている著書『だから、部下がついてこない!』や『あたりまえだけどなかなかできない上司のルール』を読んでいただいているという前提でお話をしてしまいますが、部下を育成するという行為は、社会にたくさんの優秀な人材を輩出していく連鎖を引き起こす、世直し行為です。このことから考えていただければおわかりになるように、業績を上げるという責任を果たすだけの役割では決してありません。

 

部下を持つということは、その人間の人生にも責任を持つということです。そのぐらいの覚悟がない人が部下を持ってしまったら、あまりにもその部下がかわいそうでなりません。上司はあくまで「部下の幸せの支援者」であり、「部下の人生の支援者」であるということを忘れないでください。

 

先日『あたりまえだけどなかなかできない上司のルール』をお読みいただいた方から、「……『私が上司でよかった』と言われるような、そんな上司になりたいと思います。また、部下にとっての師匠と思われるような人間になりたいです。将来、部下が同じような立場になったとき、『昔の上司だった私ならどうするだろう』と問題解決の手段として師と仰がれるような人間です。そういうことが受け継がれていくことが、会社の発展にもつながると思います」という感想をいただきました。

 

もちろん、自らが魅力的な素晴らしい人間になることが何よりも大切ですが、決して自分が必要な存在になってはいけません。上司の究極の仕事は、自立した部下、自立した組織形成です。ですから、部下に依存させてはいけませんが、「この人の部下でよかった」「この人の部下でいたからこそ自分が成長できた」と言われるような上司が世の中に増えたら、もっと社会もよくなると思いませんか?

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.221(2012年10月01日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP「部下育成」は業績を上げることだけが目的ではない