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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2014年6月2日

言ってもわからない部下にわからせる方法

私の友人で、部下指導に関して私が一目置いている素晴らしい方がいます。今日は、その方が、昔ある部下に対して行った指導をご紹介しましょう。以下友人をA、その部下をBと表現します。

 
AさんがBマネージャーの部下指導に関してかなり問題を感じていました。Bマネージャーの部下からはAさんの指導方法に関する不平・不満も多く入ってくるようになり、どうしたものかと困っていました。AさんがBマネージャーにいろいろ指導を施すものの、本人にはそれなりの考えや信念があるらしく、Bマネージャーはなかなか分かった振りをして自分のマネジメントの仕方を変えようとはしませんでした。

 
そこでAさんは荒療治をすることを決意しました。何をしたかというと、Bマネージャーが部下にしていることと同じ指導・同じ接し方を何も言わずにBマネージャーへ続けたのです。すると1週間くらい経つとBマネージャーから「最近Aさんの自分への接し方に不満がある」と言ってきたそうです。そこでAさんは「この1週間、お前への接し方は誰かのマネをしたんだけど分かるか?」と問いかけました。それでもBさんは分からなかったため、Aさんは「お前が部下に対してやっていることと同じことを俺がお前にやったんだ」と言ったら、Bさんは愕然としたそうです。

 
その後、2人はよく話し合い、Bマネージャーの部下への指導が翌日からガラリと変わったそうです。体験や経験をしないと分からないこと、言葉だけでは分からないことってたくさんありますよね。

 
このケースですとAさんは、
・Bマネージャーに悪気があったわけではないこと、
・何が悪いのかが言葉ではよく分かっていなかったこと
を理解し、荒療治でしたが体で体験させたと言う事例です。
このマネジメントにはいくつかポイントがあります。まず、上司であるAさんが部下であるBマネージャーを信頼していなければ、こういった荒療治はできなかったでしょう。また、BマネージャーもAさんを信頼していなければ、こういったやり方には反発しか感じなかったでしょう。そう考えると、いかに普段からの信頼関係の構築が必要かとつくづく感じる出来事でした。

 
その後、AさんとBマネージャーは更に関係が深まり、家族ぐるみの付き合いになっていきました。BマネージャーがAさんの「愛」を感じた結果でしょう。
あなたなら、言うことを聞かず、対処に困る部下にどう対処しますか?どう対処するにしても「信頼関係」があるかないかによって結果は随分と変わってくるのではないでしょうか。

 

 

【お知らせ】「リーダーにつける薬」は今回が最終回となります。ご愛読いただきありがとうございました。

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.258(2014年06月02日発行)」に掲載されたものです。

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