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2011年6月20日

韓国の発展に学ぶインド

韓国の発展に学ぶインド

中央日報(韓国)2011年5月11日付の記事「インド高位公務員、なぜ今『韓国学習』に熱心なのか」は、ソウルで開催された趙源東(チョ・ウォンドン)韓国開発研究院(KDI)国際政策大学院教授の講義に参加したインド高位公務員団所属公務員達が熱心に質問する様子を伝えていました。インド中央公務員教育院が8週間の局長級公務員研修過程のうち2週間を韓国海外研修に割り当てて4年目となります。インドとほぼ同じ時期に植民地支配を抜け出した韓国が、50年で先進国の一員になるほど経済を発展させた、その底力に関心があるようです。

インドの公務員らが最も大きな刺激を受けるのは、韓国のセマウル運動。インドは大部分の地方が後れた状態を抜け出すことができません。セマウル運動で農村生活環境をがらりと変えた韓国の経験は、大きなインスピレーションが得られるということです。インド中央公務員教育院のチョプラ次官補は、「セマウル運動を通じて農民が自ら農村を発展させたということが驚くべきことだ。特に自立のために努力する地域に、政府が予算インセンティブを与えたことは画期的な発想」と話しました。

政府主導で軽工業・重工業などへ産業を多角化させた戦略も、関心の対象です。インドは昨年時点で、全産業のうちサービス業の割合が55.4%を占めますが、製造業の割合は28.5%にすぎません。シン中央公務員教育院人材開発局長は、「製造業が発展してこそ部品・素材企業など派生産業が発展し雇用を拡大することができる。韓国経済がこれだけ発展したのも産業多角化政策のおかげだとみている」と評しました。

インドは地域ごとに言語が異なり、同一の教育体制を適用することが難しく、非識字率が30%を超えるのも政府の悩み。チャティスガル州政府のシャルマ副知事は、「韓国は国内総生産(GDP)の7%を教育に投資するが、インドはまだ3%台にすぎない。これが韓国の強力な点だと思う。また、優秀な人材が先生になろうと集まり、これが教育の質を高めるようだ」と言います。ただし、「学生の間の競争がひどすぎるのは懸念される点」とも指摘しています。

アフリカは「21世紀の経済成長のカギを握る地域」

毎日新聞の記事「インド:アフリカと緊密化…経済支援や人材育成通じ」(2011年5月23日付)は、5月24日と25日の2日間、エチオピアの首都アディスアベバで開かれたインドとアフリカ諸国の首脳会議にインドのシン首相が出席し、インド側は5億ドルのアフリカ支援を表明するとともに、貿易や情報技術(IT)、鉱業分野などで今後5年間で2万人の人材育成を実施する計画を表明することを伝えたものでした。首脳会議は「印アフリカ・フォーラム・サミット」の名称で08年にインドの首都ニューデリーで初めて開かれ、アフリカでの開催は初めてとなりました。

今回はシン首相と、アフリカ連合(AU)議長のヌゲマ・赤道ギニア大統領が共同議長を務め、アフリカ側から15ヵ国の首脳が参加しました。

近年、中国が資源獲得を狙ってアフリカへの積極的な進出を展開しています。インドも、アフリカを「21世紀の経済成長のカギを握る地域」と位置づけ、人材育成などを通じて関係強化を図るのが狙い。インドが表明する5億ドルの支援は、これまでに表明済みの54億ドルに上乗せするものです。

インド側は、中国のような直接的な資源開発への投資ではなく、得意とするIT分野などでの人材育成を通じてアフリカ側の信頼を得た上で、将来的に農業や資源、製造業の拠点作りを図る構想です。アフリカ諸国は、内戦に揺れるリビアなどの政情不安が問題となっていますが、インド側は政治問題には深入りせず、経済協力に専念する考えとみられます。

インド側の狙いについて、ナイジェリアやコートジボワールで駐在インド大使を歴任したビシュワナタン氏は、「2030年代以降、インドも高齢化社会となり、いずれ人的資源を求める先がアフリカとなる時代が来る。そのため、今から先手を打って、製造業やサービス業の育成を図る必要があり、中国に対抗しているわけではない」と言います。その一方で、「アフリカ諸国側は極めて実利的で、中国やインドをてんびんにかけ、最大の利益を得ようとするだろう」とも話しています。

 

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.191(2011年06月20日発行)」に掲載されたものです。

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