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2011年7月4日

徐々に現地調達の割合を高めていく計画・他

徐々に現地調達の割合を高めていく計画

NNA ASIAの2011年5月26日付の記事「安川電機、初の生産拠点稼働:12年度に売上高40億円目指す」は、北九州市に本社を置く安川電機が5月24日に発表した、インド初の生産拠点となる中・小型インバーターの製造工場が稼働したことに関する記事。生産能力は年4万台で、2012年度までにフル稼働を目指すとのことです。また、売上高目標は11年度に30億円、12年度は3割増の40億円。将来的にはサーボモーターやロボット部品の製造も手がける予定だそうです。

同製造工場の敷地面積は5,100平方メートルで、南部カルナタカ州バンガロールに建設しました。初期稼働時の従業員数は30人で、来年度までに100人程度に増やす予定です。同工場で製造するインバーターは、エレベーターやエスカレーター、工場のベルトコンベヤー、エアコンなどのモーター制御など幅広い用途で利用されており、新興国市場の急成長に伴い、需要が急拡大しているものです。

安川電機では、市場動向を見てライン増設など生産能力の拡張も検討するとのこと。工場稼働に伴い、これまで地場の建設エンジニアリング大手ラーセン・アンド・トゥブロ(L&T)を通じて手がけてきたインバーター販売の直販事業にも着手する方針です。同社ではインド市場も、3~4年後には中国並みの急成長を遂げると分析しています。

製造部品はインド国内での流通網の構築や品質管理などに時間がかかるため、当初は日本や中国から輸入し、将来的には現地調達の割合を高める予定です。

同社の地域別の売上高は、日本が同24.6%増の1,448億円、海外が同40.2%増の1,521億円です。

海外の内訳は米州が同32.4%増の388億円、欧州が同21.8%増の296億円、中国が同34.2%増の428億円、その他アジアが同81.4%増の399億円となっています。

電力の窃盗は、インド経済全体の足も引っ張るもの

ブルームバーグの記事「電気窃盗が最多のインド:電力不足で4億人が暗闇生活、経済にも打撃」(2011年6月1日付)に次のような話がありました。「インドの首都ニューデリーにある一部屋の住宅で、シカンダルさんは自家製の針金製フックを外の電線につないでいる。扇風機やランプ、小型テレビに電気を通すためだ。この行動が、世界最大規模のエネルギー窃盗につながっている」

1日の収入が2ドルに満たないシカンダルさん(26)は、「電線はそこにあるんだから、取り込むのは本当に簡単だ」と話します。

インドでは、発電される年間1億7,400万キロワットの電力のうち約3分の1は配電網を構成する伝導機器や伝送装置から盗まれるか消え去ってしまっています。インドが失っている電力は32%と推計されており、この量はどの国よりも多いものです。中国では、この値は8%です。さらに、盗まれている電力は、米カリフォルニア州の年間の需要を満たす量です。このためにインドの送電会社の年間収入は160億ドル減少しており、これはインドのGDPの1.2%に相当するものです。

インドでは約4億人が電気なしで生活していると推計されています。電気窃盗によりこれらの人々への供給事業が阻まれ、ピーク時の電力需要に対する供給量は10%不足となっています。インド政府はリライアンス・パワーやタタ・パワーなどの電力会社に対し、住宅や事務所、工場と変電所とをつなぐ送電網の稼働を増やすよう要請しています。

インド電力省では、失われる電力を2013年までに半分に減らすことを目標としています。インドでは夏季の最高気温がセ氏46度に達しますが、停電のために人々は暑さをしのぐのが困難な状態です。

電灯を点灯し続けることは経済成長にとって基本的なことで、電力の窃盗は電力業界だけでなく、インド経済全体の足も引っ張っています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.192(2011年07月04日発行)」に掲載されたものです。

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