2012年7月2日
報連相の妙
Yusen Travel (Singapore) Pte.Ltd. Managing Director 磯貝敏彦 業種:旅行業
「人が財産」、労働集約型産業の典型である旅行業界において古くから言われている言葉である。
しかしながら財産と言われながら、その人材育成になかなか力が注がれないのも、薄利多売で日々の数値に汲々としているこの業界の常である。
そのような中、組織も人も育てる一つの手段として、コミュニケーション能力(=俗に言われる「報連相」)がいかに役に立つかと言うことを、ある顧客企業を通じて教えられたことがある。
その企業では、上下の分け隔てなく「報連相」という行動が文化として根付き、どんな難問が生じてもチームとして知恵を絞りあい、最善の解決策を捜し求めるという姿勢が貫かれていた。社員は、周りの知恵を借りながら目標を達成することで、やりがいを感じ、また自然と組織で動く必要性、大切さを身に付けて行っているようである。
そもそも我々の日常における「仕事」とは、日々発生する「問題解決の繰返し」である。
“目指す目標”や”あるべき姿”を実現するうえで、日々発生する「問題解決」を通じて能力の向上を図り、達成感を感じていくものである。
問題解決を図っていくためには、PDCA(※)をしっかり把握し、そこにコミュニケーション能力としての「報連相」を上手に組合わせることが必要となる。
※〈PDCA〉
P=PLAN | ■計画する |
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D=DO | ■実行する |
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C=CHECK | ■見直す |
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A=ACTION | ■処理する |
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では、なぜ、「報連相」が必要なのか?
私達は会社という組織で働いているが、組織では上司や部下、関係部署、お客様等のさまざまな人が集まり、互いに情報を共有し、連携・協力しながら仕事を進めている。
大小さまざまな組織はあるであろうが、チームで仕事を進め行くうえで「報連相」は不可欠なコミュニケーション能力である。一人で解決できない問題も、「報連相」をすることによりチーム全員で知恵を絞ることになり、より高いレベルでの解決を目指すことができる。「報連相」を上手く使いこなすことによって、仕事の成果に差が生じ、ひいては組織や人の向上にも大きな差が生まれるというわけである。
シンガポールで仕事をするうえで、ローカル社員との間には文化や習慣、考え方の違いが当然存在する。しかしながら、仕事を進めて行くうえで、問題解決を図る基本は、日本におけるそれと案外大差ないのでは、ということも実感する。「報連相」以前に、基本的なコミュニケーション能力としての語学力・会話力が必要なことは当然だが、時にはそれさえなくても、「報連相」をしっかり意図することで問題解決を図れる場合もある。
ここでは、「報連相」の方法論については詳しくは述べないが、皆さんも日々の仕事においてそのことを意識してみてもらえればと思う。意外に、自分自身も変わることができ、周りの評価も変わってくるかもしれない。さらに、企業文化として上手く取り入れられれば、人材育成はもとより組織の向上にも役立つだろう。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.215(2012年07月02日発行)」に掲載されたものです。