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『センセイの鞄』川上弘美

『センセイの鞄』川上弘美

女性作家の恋愛小説は読まないようにしている。今までの経験から、どうしても自分には感情移入が出来ないのがわかっているからだ。しかしそんな戒めを破って読んでしまったのが『センセイの鞄』。初老の元先生と中年の元教え子との淡い恋愛を描いた作品。普段なら絶対読まない。しかし帯の文句「センセイ、帰り道がわかりません」、これで何となく衝動買い。実際に読んだが、文中で主人公がこの台詞を言った場面は好きだ。どういう状況で言ったか詳細は述べないが、ただ「自分の歩んできた道、帰るべき場所をはっきり理解している人っているのだろうか?自分も帰り道がわかりません」と柄にも無く思ってしまったりして。このような変な読み方はしなくとも、女性は勿論のこと、男性でも読後は何だか穏やかな気分になれる、大人のメルヘンとでも言うべき素敵な作品だ。

文春文庫

協力=シンガポール紀伊國屋書店

文=シンガポール本店 古矢

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.017(2004年10月25日発行)」に掲載されたものです。
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