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スペシャルインタビュー

2012年9月19日

新しい価値創造へのヒントを媒介するメディアアート

チームラボ代表猪子寿之(いのこ としゆき)さん

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世界有数のアーティストを紹介してきたIKKAN ART GALLERYにて、2012年9月13日から10月23日まで、選りすぐり9組の作家によるメディアアートの作品を集めたグループ展「The Experience Machine」が開催中。デジタルテクノロジーが身近になり、芸術表現のための手法として取り入れた作品が数々制作されている現在、特にメッセージ性の高いメディアアートを体感できる。今回の展覧会の要として、近年急速に国内外で話題を集めるウルトラテクノロジスト集団「チームラボ(teamLab)」の作品がある。チームラボ代表猪子寿之さんに話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

AsiaX

まず、平安朝絵巻物のアニメーションのような今回の出展作品、「花と屍 剥落」について教えて下さい。

 

猪子

今回の「花と屍 剥落」は、3次元空間上に立体的に構築された物語を、チームラボが考える日本の空間認識の論理構造を用いて平面化することによって作られた『超主観空間』シリーズのひとつです。 伝統的な日本画は、よく平面的と言われますが、実は最初から平面で捉えていたのではなく、何らかの独自の空間認識の論理があり、世界の捉え方が西洋のパースペクティブ(遠近法)と違ったために、空間の捉え方が異なったと考えた訳です。そのコンセプトを我々は『超主観空間』と呼んでいます。日本美術の平面に、論理構造による空間が存在するなら、それには、再現性があるはずだと考え、コンピュータ上に3次元の空間をつくってから、日本画に見えるように論理変換して作品をつくりました。

 

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AsiaX 

日本の先人達の空間認識を再現させているのですね。

 

スクリーンショット 2015-06-30 11.43.30猪子 

日本やアジアの独特の空間認識から物事を考えると、いろんな事に説明がつくような気がして。スーパーマリオブラザーズというゲームは、世界で初めて、完全にフラットな平面による横スクロールという概念を生んだゲームです。マリオのいるレイヤーと背景のレイヤーがあり、画面は横に進んでいき、マリオが走ると自分がマリオになったように空間に入り込む感じがします。我々は、普通にそう世界を捉えているから、素直にマリオが横に進むデザインにした。伝統的な大和絵をみると、ドラクエ、マリオと絵の書き方がほぼ一緒なのがわかります。つまり、鑑賞のための中心点がないので、自然に横に進む導線になる。自分を中心として世界を見ているともいえます。世界をパースペクティブでとらえていた西洋のゲームのデザインは、横に動けなくて前後で動くか、じっとするしかない。空間認識の違いが、人が創る空間デザインの違いを生み、そして、空間デザインの違いが、人の導線の違いを生んだと考えています。

 

 

 

 

AsiaX 

伝統的な空間認識が現代に生きていて、アジア的なものも今や世界的に受け入れられていることになりますね。

 

猪子 

長い歴史の中で、空間の捉え方が今も無意識に受け継がれている。文化というのは、案外身近に、非言語にちゃんと連続していて、その中で新しいものを生んでいるんじゃないかと思う。アートだけではなくて、ゲームや関連産業において、日本が一時的にすごいシェアを持っていたのも、それがあったから世界に出れたんじゃないか。逆に自分たちの連続性から逸脱した時に、案外産業というものは弱くなるのかもしれない。例えば、映画は、パースペクティブの捉え方で発展したわけですから、日本が映画やその産業で西洋を追い抜くことができないのは、その文化の連続性の中にいないからなんじゃないかと思うのです。そんなことから、自分たちの文化をひも解くことや、西洋文明が入る前にどう物事を捉えていたのかにすごく興味があったんですね。アート作品を作るプロセスを通してそれが見つけられたらいいなと。

 

AsiaX 

ニュース・ブログポータルサイト「iza」や、斬新なWebインテグレーションなどビジネス展開することで知られるチームラボが、どうしてアートの世界へ?

 

猪子 

インターネットとマスメディアは、直感的に似てますが、マスメディアは、中心があってそこから情報を発信しいくので前述の西洋のパースペクティブに近い。一方で、インターネットには中心はなくて、情報を必要としている自分が常に中心で世界が広がっている。フェイスブックもその一例で、インターネットを中心とした情報社会は、実はアジアが持っていた世界の捉え方と、相性がいいんじゃないかと。産業革命以後の社会と西洋のコンセプト、思想というのは相性が良かった。これから情報社会、インターネットやデジタル領域が中心になってきた社会には、今後違うコンセプトが必要になって来ていると考えていて、アジアの過去に少しヒントがあるのではないかと思っているわけです。また、これからは、ビジネスもアート的な感動を与えられないとダメだと思っています。つまり、アート作品に取り組むプロセスで発見できるものは、ビジネスへもいいフィードバックがあるはずだと。実は、我々、チームとしてアートを制作することには創業期から取り組んでいたんです。

 

AsiaX 

これから日本が世界に発信できることはどんなことでしょう。

猪子 

文化の連続性の中で、新しい時代に合った新しい技術で、もう一度新しいものを生み出していくこと。20世紀は19世紀の延長だったかもしれませんが、21世紀は、20世紀の延長ではない。 日本は、そう思いたがり過ぎている。未来に対して目をつぶったり、ものすごいエネルギーを使って 否定や邪魔しようとしたり、そんな事にエネルギーを使うくらいなら、自分達の現状を肯定した上で、できることを新たに構築していくことの方が重要だと思う。例えば、日本はアメリカと違い、音楽のあり方についてあらゆる事を否定したために、気付いたら、音楽はiTunesでしか買わないなど、日本で音楽のネット上のプラットホームは、全て欧米のものになってしまっている。それよりは、デジタル化に応じた情報社会のコンテンツの出現に際し、なくなるものはなくなる事を肯定した上で、新たなビジネスをつくることにエネルギーを全面的に使う方がいい。

 

AsiaX 

今後取り組んでみたいことは何ですか。

猪子 

自分が得意とする、文化の裏にある世界の捉え方を更にひも解き、その本質的な部分を新しい世界に合わせて再構築していくこと。文化というと、表面的なフォーマットの話になりがちですが、本質的な特異性としての文化です。

 

また、自分の国で100%支持されるより、世界中の自分達の価値をわかってくれる5%に支持されたい。未来へ進みたいと本当に思っている人達と一緒に新しいチャレンジをして、何らかの形を生み出せたらいいですね。

 

AsiaX 

新しいもの、ビジネスを生み出すコツは?

猪子 

常識を全面否定して、起こっている現象を素直に受け入れることかな。それぞれ個人はもう20世紀のような暮らしはしていないのに、ビジネスになると、戦略だ何だと言葉にした瞬間、20世紀の価値観を引きずっている。僕らのビジネスも、常に時代が発想させてくれた。新しいスキルや能力を持った社員が、現在300人程いて、皆が新しいものを作りたいと常に考えているので、その環境が新しいものを生んでくれている。あとは、自分達が面白いと思うものを、自分達の好きな人と、自分達を面白がってくれる人と仕事できるからかな。

猪子寿之(いのこ としゆき)

徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。チームラボは、プログラマ・エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、情報社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されている。主な実績として、『百年海図巻』と『チームラボハンガー』が文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。フランス「LAVAL VIRTUAL」にて『世界はこんなにもやさしく、うつくしい』を展示、「建築・芸術・文化賞」賞を受賞。国立台湾美術館にて、「We are the future」を開催。http://www.team-lab.net/

THE EXPERIENCE MACHINE概要

開催日 2012年9月13日〜10月27日
時間 火〜土曜日 12:00〜19:00(日・月曜日、祝日休み)
会場 IKKAN ART GALLERY
入場料 無料
 
 
Tanjong Pagar Distripark 39 Keppel Road, Singapore 089065

2012年09月19日
文= 桑島千春

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