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スペシャルインタビュー

2014年5月7日

次世代へ進化し続けるバイオリンを作る 国境を越えたアルティジャーノ

―伝統楽器のバイオリン製作に使われる最新技術とは?

ハイテク技術により楽器の音の周波数を測ったり、3Dモーションで楽器がどう振動しているかまで見ることができます。ただ、楽器が音を出す時、どのように人間の耳がデシベルと周波数をキャッチして、どう快感を感じるのかはわかっていません。同じ周波数の数値を導くにも、楽器のボディで削れる箇所は複数ある。どこを削るかを決める時、最後は人間の勘とセンスと才能になってくるわけです。どんなに技術が進んでも、それは最高の音響効果を作るための補助にしかなりません。

―なぜストラディバリウスは名器と言われるのでしょうか?

ストラディバリは感覚でそれを製作していたのに、どうして現代の最新技術でもそれに追いつけないのか、それは考え方としては間違った発想です。ストラディバリウスは17世紀に世に出てから、これまで400年近くの間に何人もの一流の奏者や職人の手によって改良を加えられ続けてきました。だからこそ出せる音があり名器とされるのです。その変化に耐えられ、ある意味ニュートラルな最初の楽器の形を作ったことにストラディバリの偉業があります。ストラディバリウスは、現代の技術があって今の形に成長できたのと、現在も手が加えられ続けており、いまだに成長しているのです。

―西村さんが作る弦楽器の特徴は何ですか?

イタリア風に楽器を作るというのには限界がある。使用するのはイタリアの技術ですが、インターナショナルな背景があって私の世代でしか作れないものを目指しており、それが受け入れられていると思います。過去のスタイルを踏襲して自分のスタイルをのせる、いわばネオ・クラシック。一見伝統的でありながら最小限の仕上げとスタイルを盛り込んでいます。

―これまでの逆境、どう乗り越えてきましたか?

スクリーンショット 2015-06-30 11.20.27実は、ずっとスランプ中で、乗り越えていません(笑)。自分の楽器がイタリアで格式ある賞を受賞し、音を作る技術に少し自信を持てた時、大阪交響楽団の首席ソロ・コンサートマスターの森下幸路さんにコンサートホールで私のバイオリンと他のものを弾き比べていただく機会がありました。私の楽器を弾いた後、「新作の楽器なのにいい音が出るね」とおっしゃって。その後、森下さんがマテオ・ゴフリラー作のバイオリンを弾こうと、調音する音を聞いただけで打ちのめされました。300年育てられた楽器との違いに愕然としたのです。もっと音響の研究をして良いものを作らねばと思いました。以来、これまで取り組んでいる最中ですが、自分が生きている間は乗り越えられないでしょう。次の世代まで自分の楽器が使ってもらえるという実感を得られたら、少し安心できるかもしれません。

―世界で通用するプロであるためには?

まずは日本人にありがちな内向き姿勢をなくすこと。そして自分の仕事と真摯に向き合った時、徹底的に好きで情熱を持って取り組めるなら、臆することなく世界で戦える。それで認められれば良し、そうでなければ認められるまで頑張るのみです。

―AsiaXの読者にメッセージを。

世界から見て日本人の評価は高い。独特の礼儀正しさ、仕事への情熱、きめ細かさ、そして何より責任感の強さ。どうぞ自信を持って、頑張ってください。

西村翔太郎(にしむらしょうたろう)

京都府生まれ。2000年にバイオリン製作を始め、2001年、イタリアへ渡る。2002年ミラノ市立バイオリン製作学校に入学。2007年から現在まで、イタリア北部のクレモナで、ダヴィデ・ソーラ氏に師事し、バイオリン・ヴィオラ・チェロの製作に携わる。イタリア国内弦楽器製作コンクールにおいて、バイオリン部門優勝(2010年)、ヴィオラ部門3位(2010年)チェロ部門2位(2011年)などの受賞歴がある。

 

2014年05月07日
文= 桑島千春

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