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会計・税務相談

2013年8月19日

Q.シンガポールの税法上、損金算入されない費用にはどのようなものがありますか。

シンガポールで損金算入されない費用

シンガポールの税法上、費用が損金として扱われるかどうかを判断するには、まず基本として以下の点を頭に入れておくとよいでしょう。

 

  1. 専らかつ完全に所得を得るための活動に生じた費用であること
    損金は、課税の対象となる所得を得るために生じた費用として控除が認められているため、所得を生じない活動に発生した費用や、会社が事業を行っていない期間中に発生した費用は、損金として認められません。
  2. 損益取引に発生した費用であること(資本取引は益金・損金不算入)
    シンガポールの税法は損益取引のみを対象としており、資本取引は対象外とされています。従って、固定資産の取得資金を借入金により調達した場合の支払利息や、M&Aに関する法務費用といった支出は資本取引と見なされ、損金不算入とされます。
  3. シンガポール政府の政策上特例が定められている費用に注意すること
    例えば、乗用車に関する費用は、国内で登録される車両の数量を制限するために、一切損金不算入とされています。このように、政府の政策に沿って損金算入が意図的に制限または優遇されている費用がありますので、注意が必要です。

 

では、費用の項目別に、注意すべき点についていくつか見ていきましょう。

 

  • 開業費用会社の設立費用は資本取引であると見なされ、損金にはなりません。新設会社を支援するための措置として、2012賦課年度(2011年終了会計年度)より、最初の売上が計上された会計年度の前年の開始日をもって税務上の開業日と見なし、それ以後に発生した費用については損金とすることが認められています。
  • 貸倒引当金売掛債権を含めた金融資産の税務上の取り扱いは、会計基準のFRS 39号「金融商品:認識および測定」の取り扱いに準じ、営業債権について会計上の減損が計上された場合には、税務上もそのまま損金として扱われます。なお、会社がFRS 39号準拠以前の税務上の取り扱いを選択している場合には、個別の債権につき回収可能性を吟味の上計上された引当金のみ損金算入が認められます。
  • 医療費損金算入可能な医療費の限度額は、従業員の総報酬の1%とされています。ただし、会社が政府により奨励される所定の医療保険制度に加入、あるいは従業員のメディセーブ口座に追加的な拠出を行っている場合には、従業員の総報酬の2%が限度額とされます。
  • 租税公課源泉徴収税等の所得に課せられた税金は、損金とはせずに所得計算の過程において別途考慮されます。印紙税は、投資としての株式や不動産の売買にかかるものや不動産賃貸の新規契約にかかるものは資本取引と見なされ、損金算入されません。事務所や社宅の賃貸契約更新の場合には、損金として扱われます。
  • 減価償却費会計上の減価償却費は全て一旦加算し、別途税務上の償却が認められる資産に関してのみキャピタルアローワンスとして控除できます。
  • 寄付金寄付金は損金としては扱われず、認可公益団体または政府機関への所定の寄付についてのみ、別途控除が認められています。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.240(2013年08月19日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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