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ビジネスインタビュー

2004年12月27日

「日本企業の海外進出にはシンガポールをおすすめします」

JETROシンガポール 前海外投資アドバイザー 小川洋志郎さん

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「VSOPでいきましょう」

日本貿易振興機構(JETRO)シンガポールのビジネスサポートセンターで海外投資アドバイザーとしての任期を終えた小川洋志郎氏は言う。

 
「Vは20代、Sは30代、Oは40代、Pは50代を表すキーワードです」
20代ではバイタリティー(V)を持って何でもやること。30代はスペシャリスト(S)。何か専門分野を持ってそれを極める努力をする。40代になると、オーガニゼーション(O)。組織全体の利益になるよう行動する。50台ではパーソナリティー(P)。自分の人となりを磨く。海外駐在27年のプロならではの心に響くメッセージだ。

 
JETROは、日本企業の海外投資、現地企業との合弁や技術提携などを支援するため、「海外投資アドバイザー」という制度を設け、アジアの投資重点国と地域に配置している。アドバイザーは、アジア企業とのビジネス経験が豊富な対アジア投資のエキスパートだ。

 
小川氏は大学卒業後、総合商社に入社。初めに赴任したのはボルネオの奥地だった。当時は、赴任中に事故やマラリアなどの病気で日本人駐在員が命を落とすこともめずらしくなかった。出張は船で行く時代。現地駐在員の間で連絡網が作られていたほど他社間でも連携は密だったという。 生涯の趣味とも言える東西交易史に興味を持ったのもボルネオが発端。単身赴任の上、娯楽のない僻地で見つけた陶磁器を収集し始めたことがきっかけ。その数約6000個。趣味というより、ちょっとした博物館が開けそうだ。

 
輸出入、貿易実務、会社清算、債権回収、会社設立、会社経営など、多岐にわたって経験してきた小川氏のモットーは「時代の変化を読む」こと。「常にアンテナを立てて周囲の状況を読む。危険信号を察知する才能は誰にでもある」と小川氏は言う。その秘訣は、▽軍事安保(治安状況など)▽資源安保(エネルギー、鉱物資源、人材、技術、知的財産など)▽金融安保の観点から状況を見ることだ。

 
現況で言うと、穀物産出国だった中国とアメリカが輸入にシフトし始めている。これは地球的規模の飢餓の前兆につながる。また中国の場合、人民元が切り上げられれば労働集約型産業が立ち行かなくなるのは自明だ。こういったデータや事象をまとめ、関連付けて分析する能力はビジネスマンには不可欠なもの。操作の可能性もある情報を鵜呑みにせず、自分で考える力をつけることが肝要で、そのためには普段から定点観測と動態観測を怠らないことだという。定点観測の一例は、P&Lやバランスシートを一年じっくり見ること。それに対して動態観測とは過去に遡って比較分析することだ。

 
また、「ビジネスマンは5つの国を持つ」が持論。つまり▽国籍を持つ国▽居住する国▽ビジネスを展開する国▽納税する国▽娯楽を楽しむ国だそうだ。シンガポールは、ビジネス環境の良さでは特筆に価するという。「ただし人工的なので、住んでみてどうか…」と笑う。小川氏の「住む国」は文句なしに日本なのだそうだ。

 
現在、シンガポールに進出する日本企業は製薬・バイオ関係が主流。薬事法が厳しく、産学官の連携が難しい日本では新薬開発に莫大な予算と時間がかかる。その点、シンガポールは行政効率が良く、省庁間の軋轢に悩まされることがない。知的財産保護やテクノロジー開発に国としてのバックアップもあって時間も短い。

 
日本企業の15%しか海外進出を果たしていない状況である。まだ国際化は進んでいない。海外進出を考える企業に対しては、「ハードルが低いシンガポールでスタートするのが吉だとアドバイスしています」と小川氏。「他国だとスッカラカンにされかねないですから。英語も通じるシンガポールから始めることをおすすめします」とのこと。

 

 

「いずれは自分でも趣味と実益を兼ねたビジネスを始めたいですね」

小川氏の心はすでに日本に飛んでいる。海外勤務をきっかけに結婚したものの、以後ほとんど海外で単身赴任。フルタイムでキャリアを積む奥様の理解もあり、家族仲もすこぶる良いそうだが、日本が恋しいのは当然である。

 
座右の銘は「おまつの下をくぐる」。「おまつ」とは老松のこと。老いると横に伸びる松の枝は頭を下げないと通れない。志は高く、腰は低く。「年をとるほど、謙虚に行動せよ」と自戒する。

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小川洋志郎(おがわ ようじろう)

東京外国語大学インドネシア語学科卒業後、主にインドネシアを中心に、アセアン各国に通算27年の駐在経験を持つ。商社勤務を経てインドネシア、その後シンガポールでJETROのアドバイザーに就任。
 

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