シンガポール政府は、南西部の複数の島を埋め立てによって統合し、新たな「西部島(Western Island)」を形成する長期計画について、本格的な開発に先立ち海洋生物多様性への影響を詳しく調査する方針を明らかにした。周辺にはサンゴ礁など豊かな海洋生態系が残されており、研究者や自然保護団体から慎重な検討を求める声が上がっている。
ローレンス・ウォン首相は8月23日のナショナルデー・ラリー(NDR 2026)で、Pulau Semakau、Pulau Bukom、Pulau Sudongなど複数の島を将来的に一体化する構想を発表した。新たな島には先端製造業など次世代産業のほか、発電インフラや国防関連施設を配置することが想定され、ジュロン島との新たな接続ルートも整備する計画である。
一方、対象海域には長い年月をかけて形成されたサンゴ礁や海草藻場、マングローブなどが存在する。専門家や自然保護団体は、大規模な埋め立てによってこうした成熟した生息環境が失われれば、元の状態に戻すことは極めて難しいと指摘している。特に一部のサンゴ礁は約8,000年前から形成されてきた可能性があり、生物多様性だけでなく研究や教育の面でも重要な価値を持つという。
国家開発省(MND)は、政府が西部島しょと周辺海域の生物多様性の価値を認識していると説明。開発計画や埋め立て方法を決定する前に、実現可能性調査、現地調査、測量、工学・環境調査などを実施する方針を示した。生物多様性への影響に加え、海流などの水理環境がどのように変化するかについても検証する。
政府は研究者や自然保護団体などの関係者とも協議し、調査結果を今後の計画策定に反映する。埋め立て範囲や形状などについても、環境への影響を踏まえて検討していくとしている。
シンガポールでは限られた国土を補うため埋め立てによる土地造成が長年行われてきたが、近年は生物多様性の保全との両立がより重要な課題となっている。Pulau Sudongで進められている別の埋め立て事業でも、サンゴ礁や海草、マングローブなどへの影響が確認され、希少なサンゴの移植などの対策が計画されている。
新たな西部島は今後数十年をかけて整備する長期構想で、将来の産業、エネルギー、国防を支える重要な土地となることが期待される。一方、シンガポールに残る貴重な海洋環境をどこまで保全できるかが、計画具体化に向けた大きな焦点となりそうだ。
シンガポール、西部島しょ埋め立て前に環境調査 豊かな海洋生態系への影響を検証
