2026年7月27日
シンガポール、給与未払い・不当解雇の申し立てが増加 企業再編や事業閉鎖が背景に
シンガポールで2025年に給与未払いおよび不当解雇に関する労使紛争の申し立て件数が増加し、少なくとも2019年以降で最も高い水準となった。人材開発省(MOM)と労使紛争管理三者同盟(TADM)が公表した「Employment Standards Report 2025」によると、2025年に受理された雇用関連の申し立て・不服申立ては1万3,083件で、従業員1,000人当たり3.44件となり、2024年の3.12件から増加した。政府は、雇用環境全体の悪化ではなく、企業再編や人員削減、事業閉鎖の増加による労働市場の変化が主な要因との見方を示している。
給与未払いに関する申し立ては1万801件で、従業員1,000人当たり2.84件となり、前年の2.63件から増加した。特に外国人労働者の申し立てが増えており、建設業が全体の46%を占めたほか、飲食業や専門・技術サービス業でも多く見られた。一方、シンガポール人・永住者では、事務・サポートサービス、専門・技術サービス、飲食業、卸売業での申し立てが目立った。多くは退職時の最終給与や、経営難に陥った企業での未払いが原因だった。
不当解雇に関する申し立ては2,168件で、従業員1,000人当たり0.57件と、2024年の0.46件から増加した。特にシンガポール人・永住者では0.64件と外国人労働者(0.44件)を上回った。全体の67%はTADMでの調停により解決し、残る33%は雇用請求裁判所(Employment Claims Tribunals:ECT)で審理された。2025年に不当解雇案件で支払われた補償額は約271万Sドルに達した。
一方で、労使紛争解決制度は引き続き高い成果を上げている。給与未払い案件の88%はTADMで調停により解決され、最終的に92%の申立人が未払い賃金を全額回収した。回収総額は2,200万Sドルと前年の1,900万Sドルから増加した。MOMは、給与未払いは法律違反であり、悪質な雇用主に対しては罰則や外国人労働者の雇用制限などの措置を講じるとしている。
今回の報告は、雇用関連の紛争件数が増えたものの、その背景には景気後退ではなく企業の再編や事業構造の見直しがあることを示している。同時に、多くの案件が調停によって解決され、未払い賃金の大半が回収されていることから、シンガポールの労使紛争解決制度は引き続き機能していると評価される。企業にとっては適切な雇用管理と法令順守がこれまで以上に重要となる一方、労働者にはTADMなどの制度を活用して早期に問題解決を図ることが求められそうだ。

