2025年8月1日
MAS、金融政策を据え置き 上期の堅調成長も後半は関税リスクに警戒
シンガポール金融管理庁(MAS)は7月30日、2025年上期の予想を上回る経済成長を踏まえ、シンガポールドルの通貨バスケットに対する名目実効為替レート(S$NEER)の緩やかな上昇ペースを維持すると発表した。政策バンドの中心値や幅にも変更はない。
MASは2025年に入り1月と4月に金融緩和を実施しており、現時点の政策スタンスは「中期的な物価安定に対応するのに適切」と判断している。2025年通年のコアインフレ率見通しは従来通り0.5〜1.5%に据え置かれた。
背景には、上期にみられた「フロントローディング(前倒し出荷)」がある。米国の関税引き上げ前に輸入業者が在庫を確保したことで輸出が急増し、第2四半期のGDP成長率は前年同期比4.3%と、市場予測(0〜2%)を大きく上回った。
ただし、MASはこうした一時的な成長の反動が下期に出ると警戒しており、「フロントローディングの効果が薄れることで、通商関連分野は減速し、建設業や金融サービスの一部が下支え要因となる」と見解を示した。
米国の関税措置による影響も懸念材料である。6月には鉄鋼・アルミニウムの関税が50%に引き上げられ、シンガポールからの対米輸出にかかる実効関税率は6.8%から7.8%へ上昇。8月以降、猶予されていた関税の発動により、貿易摩擦が再燃する可能性もある。
それでもMASは、「4月以降の貿易交渉の進展や金融市場の落ち着きにより、短期的に急激な世界経済の失速リスクは後退した」とも指摘している。
為替市場では、発表後にSドルが対USドルで0.14%上昇し、1USドル=1.2861Sドルとなった。年初来では5.4%の上昇。DBS銀行はSドルの年末時点での想定レートを1.28とし、2026年にはさらに強含みの1.20〜1.25レンジで推移する可能性もあると予測する。
今後も世界経済の構造変化や通商政策の影響を慎重に見極める必要があり、MASは「インフレと成長の両リスクに引き続き警戒する」としている。
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