シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOP政府の関与、民族・宗教問題での必要性が増加

社会

2025年2月5日

政府の関与、民族・宗教問題での必要性が増加

シンガポールの政策研究所(IPS)が2月4日に発表した報告書によると、2024年には民族や宗教に関する問題への政府の関与を求める声が2018年と比較して増加したことが明らかになった。
 
調査では、民族問題について政府の関与を求める回答が30.5%(2018年は27.3%)、宗教問題では28.4%(2018年は23.2%)と上昇した。一方、移民、社会経済格差、LGBT問題については、政府の関与の増加を求める声は少なかった。
 
この報告書は、シンガポール社会の分断要因に関する市民の認識と政府の対応についてまとめたものであり、同日、議会では「人種調和維持法案」の審議が行われる。これは、政府の権限を強化し、民族間の調和を維持する目的がある。
 
2024年の調査は4月から8月にかけて実施され、全国のシンガポール市民4,000人を対象とした。民族・宗教問題が不適切に扱われた場合、特定のコミュニティに対する怒りや暴力を招く可能性が最も高いと認識されている。
 
政府の関与について、民族問題では63.3%(2018年は65.7%)、宗教問題では64.8%(2018年は67.8%)が現状維持を支持。減少を求める声はそれぞれ6.2%、6.9%に留まった。
 
民族問題に関する政府の関与については、中国系の回答者の66.8%が現状維持を支持し、マレー系(51.4%)、インド系(51.2%)と比較して高い傾向を示した。年齢が高く、所得が高い層も同様の傾向が見られる。
 
全体として、民族・宗教問題の管理について、回答者の56.1%が満足、20.6%が非常に満足と回答した。一方、2.8%は不満を表明し、その多くが家族や友人、同僚との対話を通じて状況を改善したいと考えている。
 
また、社会経済格差、移民、LGBT問題に関する政府の関与については、満足度が2018年と比較して増加した。特に移民問題では、2024年に55.4%が現状に満足(2018年は45.7%)、LGBT問題では49.9%(2018年は42.9%)と上昇している。
 
さらに、民族・宗教問題の公的議論のレベルについて、約6割の回答者が現状で十分と回答し、2018年との大きな変化はなかった。一方、社会経済格差、移民、LGBT問題の公的議論については、2024年の調査で満足度が向上した。
 
調査では、政府が民族・宗教の調和維持に責任を負うべきであるという意見が強く、政府は全ての民族・宗教グループが伝統や習慣を維持できるよう支援するべきだと考える人が9割を超えた。
 
また、政府が人種間の調和を向上させ、公平に対応していると評価する意見も多かった。民族政策に関しては、2024年調査で44.9%が「中国・マレー・インド・その他」という分類を維持すべきとし、24.8%はより包括的な枠組みへの拡大を支持した。
 
さらに、住宅地区における人種的多様性の維持を支持する意見が強く、2024年では93.2%、2018年では92%がこの考えに同意した。
 
移民政策においても、人口の人種構成維持を重要とする意見は83.8%に達し、国会で少数派の割合が人口比に応じるべきだと考える人は84.8%に上った。
 
また、タクシー運転手が乗客に対して人種差別的発言をしたとする仮定のSNS投稿への対応を尋ねたところ、7割が「何もしないのも許容範囲」と答えた。一方、投稿にコメントして運転手を批判することが許容されると考える人は半数に達した。
 
若年層では、SNSを活用して運転手の責任を追及する傾向が強く、自身のアカウントで投稿を共有し批判したり、運転手の解雇を求めるオンライン署名を始めたりする動きが見られた。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOP政府の関与、民族・宗教問題での必要性が増加