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経済

2025年1月31日

シンガポールを訪れる中国人観光客、自由旅行と体験型観光を重視

近年、シンガポールを訪れる中国人観光客の旅行スタイルが大きく変化している。かつての団体バスツアーは減少し、自由旅行や小規模グループでの滞在が主流となっている。彼らはユニバーサル・スタジオ・シンガポールのような定番観光地ではなく、地元の生活に触れられる体験型ツアーを求めている。
 
オリエンタル・トラベル&ツアーズのCEOスタンリー・フー氏によると、中国人観光客は初訪問者ではなくなり、新たな体験を求めているという。特にプラウ・ウビンやクス島といった比較的知られていない場所を訪れるツアーの人気が高まっている。
 
また、小紅書(Xiaohongshu、レッドノート)などのSNSの影響により、短期間の個別ツアーを選ぶ観光客も増えている。シンガポール観光ガイド協会のポーン・ワイマン事務局長は、中国人観光客の旅行スタイルが大きく変化していると指摘する。
 
2023年の最初の11カ月間に中国からの観光客は約290万人となり、インドネシアを抜いてシンガポールの最大の訪問国となった。2019年の同時期には335万人であったが、パンデミック後の回復が進んでいる。さらに、滞在日数の平均も2019年の3.04日から2023年には3.8日に増加している。
 

買い物から体験へ


 
かつて中国人観光客はブランド品などの高額消費で知られていたが、現在は旅行中の消費行動が変化している。テマセク・ポリテクニックの講師ベンジャミン・カッシム氏は、中国経済の停滞や不動産市場の低迷が影響し、旅行における消費傾向が慎重になっていると指摘する。「以前はショッピングが主目的だったが、現在は体験が重要視されている」と述べた。
 
この傾向は、ラグジュアリー中古品を扱う「ニー・ヴィンテージ」などの店舗にも影響を与えている。2022年以前は売上の約70%を中国人観光客が占めていたが、現在は30%にまで減少した。
 

家族旅行の増加


 
観光客の属性変化は、シンガポールのホテル業界にも影響を与えている。フェアモント・シンガポールとスイスホテル・ザ・スタンフォードのマネージングディレクター、ウィリアム・ハンドリクマン氏によると、中国からの家族旅行や複数世代の旅行が増加しているという。「シンガポールの安全性が評価され、家族連れの旅行先として選ばれる傾向が強まっている」と述べた。
 
この変化に対応するため、アコーは中国のアリババと提携し、中国語対応のサービスやメニュー、Alipayなどの決済システムを導入するプログラムを実施している。今後も中国人観光客のニーズに応じたサービスの充実が求められる。

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